Music of Frontier

『ダーク・エンジェルズ』も例外ではない。俺達は今、最低限、バンドの体裁すら保てていないのが現状である。

少なくともあと二人。ボーカルとギターがいなければ始まらない。

その欠けた二枠のうち…一つを、ルトリアが?

「な、ミヤーヌ。名案だろ?何処ぞの馬の骨とも知れない奴が来るより、ルクシーヌの幼馴染みの方が信用出来るしさ」

「それはそうかもしれないが…。でも、ルクシーの幼馴染みは、バンドに興味があるのか?」

「…どうだろう…。ないことはないと思うけど…」

俺がCD貸してあげると…喜んで聴いてたし。

「じゃ、それを目標にしてもらえば良いじゃん!ルクシーヌの幼馴染みは元気になる!エル達には仲間が出来る!一石二鳥だな」

…そんな名案のように言うけどさ。

…上手く行くか?そんなのが。

「ルトリアが『そんなの興味ない』って言ったら終わりだぞ…」

今のあいつに…音楽を志すような余裕があるとは思えない。

今まで楽器なんて触ってるところ、見たことないし。

この間まで帝国騎士を目指していた人間が、いきなりバンド組んで音楽やろうぜ…なんて。

いや…でも、もしルトリアが『ダーク・エンジェルズ』に入ってくれたら。

一緒にバンド活動出来たら。

それは…きっと楽しいだろうな。

儚い望みかもしれないが…。

「ひとまず、聞いてみるだけ聞いてみたらどうだ?何かのきっかけになるかもしれないし…。俺達は初心者でも歓迎だからな」

と、ミヤノ。

「…分かった。聞いてみるよ」

大して期待していた訳ではなかった。

リハビリして、歩けるようになって、俺達と一緒にバンドしよう。なんて。

ルトリアが頷くとは思えなかった。それでも…俺は、一縷の望みに賭けることにした。