Music of Frontier

俺はその頃、とあるアマチュアバンドに所属していた。

その名も、『ダーク・エンジェルズ』。

元々音楽が好きで、いつか好きなアーティストのライブを見に行きたい、なんて言っていたが。

その熱が高じて、いつしか俺は、自分で音楽をやりたい、バンドをやりたいと思うようになっていた。

独学でベースを練習して、ある程度上手くなってから、俺はインターネットのバンドメンバー募集サイトで、『ダーク・エンジェルズ』に出会った。

ルトリアのマグノリア家だったら、貴族の子女がそんな不健全なことを!と、決して許してはもらえないだろう。

しかし俺の母は、俺が一般庶民の仲間と集って音楽活動することに反対はしなかった。

あなたがやりたいことを見つけたのだから、好きなようにやりなさい、と。

我が家は守らなきゃならないような体裁も体面もないのだから、自由に生きなさいと。

下流貴族だからこそ許される自由なのかもしれない。

そして、それ以来…こうして週に何度か集まって、楽器の練習をしているのだが。

残念ながら俺達はまだ、まともに音楽活動を出来ていない。

というのも。

「どーせこのままじゃ、いつまでたってもメンバーなんて集まらないんだからさ。ルクシーヌの幼馴染みを勧誘出来たら、一人増えるじゃん」

「いや…それはそうだが…」

『ダーク・エンジェルズ』には現在、三人しかメンバーがいない。

ベース担当の俺、キーボード担当のミヤノ、そしてドラム担当のエルーシア。

メンバーの募集は常にしているのだが、なかなか希望者が現れない。

俺が加入してから、もうだいぶたつけど…希望者が現れる気配すらない。

俺達のグループだけに限ったことではない。世間のバンドは大体何処も似たような問題を抱えており、メンバー募集サイトは常に閑散としている。

需要と供給が一致していない、という奴だ。

バンドをやりたい人はいても、やりたい楽器が偏っていたり、メンバー間の技術に差があったりと、バランスの釣り合ったメンバーがなかなか集まらない。