Music of Frontier

「…うーん…」

「何だよルクシー、難しい顔してさ。ちっと集中しろよ」

「あ、ごめん…」

心ここにあらずがバレたようで、エルーシアに怒られた。

「そんなんじゃあれだぞ、上手くなれんぞ。メジャーデビュー出来んぞ!」

「メジャーデビューって…」

…いずれにしても、今の状態じゃ無理だろ。

技術云々ではなく、そもそもメンバーが足りてないんだからさ。

「それはさておき…ルクシー、本当に元気ないな。大丈夫か?」

エルーシアのみならず、ミヤノまで心配そうな顔をしてそう言った。

…元気ない…か。

「また、例の…幼馴染みのことで悩んでるのか?元気になってきたんだって言ってたじゃないか」

「あー…うん。元気にはなってきてたんだけど…」

また行き詰まっちゃってると言うか…。

このままじゃ、多分これ以上ルトリアは元気にならないだろう。

「まだ何かあるのか?」

「…うん。身体は元気になってきてるんだが、どうも…リハビリをしたがらなくて」

「リハビリを…。…成程…」

「歩けるようにならなくても良い、って…」

「…そうか」

ルトリアの境遇を思えば…無理もないことなのかもしれない。

それでも…。俺の自己満足だということは分かっているが、ルトリアには…頑張って、歩けるようになってもらいたい。

「医者は何て言ってるんだ?」

「医者は…。本人に夢や目標がないのが原因だって。だから、ルトリアに何か…歩けるようになってやりたいこととか、行ってみたいところとか…そういう目標を与えてあげたらどうか、って」

「そうか…。その通りなのかもしれないが…言うは易しだな」

…そんなもの、簡単に見つかるなら…今頃ルトリアは病院のベッドの上にはいないよな。

ルトリアは、今までずっと、帝国騎士になる為に生きてきたのだ。

突然その夢を奪われて、新たな目標を、と言われてもそう簡単に思い付くものではない。

今のルトリアにとっては、将来のことなんて、考えるだけで気分が悪くなるんじゃないだろうか。

「目標…か。そうだな…」

二人して考え込む、俺とミヤノ。

しかし。

エルーシアだけが、何故かあっけらかんとして、こんなことを言った。

「目標がない?丁度良いじゃん。ウチに勧誘しようぜ」

「…は?」

俺にとっては、晴天の霹靂だった。

そして同時に、天の采配だったのかもしれない。