Music of Frontier

その日、いつものようにルクシーが面会に来てくれた。

最初の頃、エインリー先生に許された面会時間は五分だけだった。

けれど、俺が段々と回復するにつれて、面会時間も伸びていき。

今では、面会時間に制限はなくなった。病院の面会時間内なら、好きなときに来て、好きなときに帰ることが出来るようになった。

その為。

「ルトリア、お前この馬鹿。残すな。余さず全部食え」

「えぇ…無理ですよ…」

「無理じゃねぇ。食えったら食え。吐いてでも食え」

こうして時折、抜き打ちチェックとばかりにお昼の時間にやって来る。

そして、俺がちゃんと食べるまで、横で監視しているのだ。

そのときのルクシーと来たら、さながら鬼監督である。

「しかも、狙ったように肉を残すな」

「だって…。重くて…」

「重いじゃねぇ。我が儘言うな。肉食わないからガリガリなんだ、お前は」

「…今は動いてないんですから…そんなにカロリー摂取しなくても…」

ずっとベッドの上でだらだらしてるだけなのだから、大して食べなくても生きられる。

それなのに、ルクシーは許してくれない。

「子供かお前は。良いから食べろ。残すな。残したら鶏さんに失礼だろ」

「…分かりましたよ…」

このままじゃ、顎を掴まれて無理矢理口に突っ込まれかねない。

気は進まないが…食べよう。

渋々スプーンを手に取り、のろのろと、カタツムリが歩くようなペースで食べる。

ルクシーは、俺が不正をしないように、じーっとその様子を眺めていた。

「…そんなに見られてたら…むしろ食べづらいんですけど…」

「駄目だ。見張ってないと、お前が不正をする恐れがある」

「…」

…別に、不正なんてしないもん。

ちゃんと食べるもん。

30分くらいかけて、ようやく皿を綺麗にすると。

ルクシーは、よろしい、とばかりに頷いた。