Music of Frontier

身体は元気になってきた。

とはいえ、心の方は治っているのかと言われると、疑問だった。

俺は立ち直っているとは言えなかった。

今でも、自分の左足や、希望の費えた将来のことを思えば、胃がキリキリと痛む。

ただ一日一日を生きているだけだった。何の希望もないし、展望もない。

これから先、どうなるのか分からない。

エインリー先生は、歩くことが出来るように俺にリハビリをするよう勧めた。

けれど、俺はリハビリを断った。

今更頑張ったって、歩けるようになったって…杖なしでは歩けないし、健常者と同じようにはならない。

そう思うと、苦しい思いをしてリハビリをする気にはならなかった。

このまま、一生車椅子生活で構わない。

そりゃ不便だろうけど、でもリハビリをする気力はなかった。

歩けるようになったって、もう帝国騎士になることは出来ない。

帝国騎士どころか、健常者のように普通に生活することすら出来ない。

そう思うと、今更「普通」になる努力をしても、仕方なかった。

ルクシーにも「リハビリした方が良い」と言われた。けれど…こればかりは、どうにも駄目だった。

中途半端にまともな身体になるくらいなら、このままポンコツな身体で生きていった方が良い。

そう思っていた。

エインリー先生や、ルクシーのお陰で、途方もないほどの絶望は俺の中から去った。

でも一方で、希望もなかった。

生きている意味も、夢も、理想もない。

かといって、死ぬ理由も最早なくなった。

エインリー先生も、ルクシーも、俺が元気になって良かった、と喜んでくれている。

俺の回復を願ってくれている。

それなのに、俺は素直に喜べなかった。

体調が戻って、元気になって、それで?

それから先、俺はどうなるんだろう?どうなれるんだろう?

過去の傷は、癒やすことが出来る。

その代わりに、将来への不安が俺の心を占めていた。