Music of Frontier

俺は、一度人生に絶望した。

もう二度と立ち直れない。もう二度と前を向いて生きることは出来ない。

一度は、そう思った。

けれど、時間は優しかった。

俺は少しずつ、少しずつ回復していった。病院のベッドの上で、薬を飲み、カウンセリングを受けた。

現代の進歩した医療は、俺の凍てついた心を少しずつ溶かされていった。

エインリー先生の献身的な治療と、それからルクシー。

俺が回復してきたのは、ルクシーのお陰も大きかった。

彼は面会が許されるときは必ずやって来て、あれやこれやと、俺に世話を焼いてくれた。

ルクシーは優しいだけではなくて、時には俺にねちねち説教していった。

主に、俺がちゃんと食事をしないことについて。

食べろ馬鹿、太れ、何だその骸骨みたいな身体は。肉食わんからだ、太れ、肥えろ、この馬鹿。

等々、散々言われた。

そんなルクシーに急かされるように、俺は半ば無理矢理食べさせられた。

時にはルクシーのお母さんが作ったというお菓子を、エインリー先生の許可をもらって持ってきた。

「うちの親が『お前の為に』作ったんだから、まさか残すなんてことはしないよな…?」と。

最早脅迫である。

その甲斐もあって、摂食障害寸前だった俺は徐々に体重が戻ってきた。

ルクシーに言わせれば、まだまだ痩せっぽちだ、とのことだが。

ちょっとずつ身体がもとに戻り、ルクシーからの手紙も集中して読めるようになり、その返事を書くことも出来るようになった。

俺の身体は、少しずつ元気になっていった。