Music of Frontier


──────…ルクシーに手紙を届けてもらった、翌日。

エインリー先生は、俺にこう尋ねた。

「ねぇ、ルトリア君。君…ルクシー君に会いたい?」

「…え…」

あまりにも唐突で、俺はしばしぽかんとしてしまった。

…ルクシーに、会いたい?

「そろそろ面会を許可しても良い時期かと思ってね…。ルクシー君に、会ってみない?」

「…」

…会ってみない?って…言われても。

…そりゃ、会いたいさ。

もう長い間会ってないんだから。

今までこんなに長く会わなかったことないんじゃないか、ってくらい…長く会ってない。

だから会いたい。ルクシーの顔を見たい。でも…。

「…ルクシーに会わせる顔なんてありませんよ」

どの面下げて俺の前に出てきたんだお前、と言われたら。

俺には、言い返す言葉がない。

ルクシーにどれっ…だけ、心配と迷惑をかけまくったことか。

俺の想像以上に、ルクシーは大変な思いをしたはずだ。

俺が、こんな腑抜けみたくなってさ。

エインリー先生に聞いたところ、ルクシーは俺が腑抜けになっている間も、度々見舞いに来てくれてたそうじゃないか。

そうとも知らず、俺は長い間ルクシーの存在すら忘れていたのだ。

どの面下げて会えるものか。

申し訳なくて、会うことなんて出来ない。

「無理はしなくて良いんだよ、ルトリア君。ルクシー君もね、君に無理させてまで会いたくないって言ってたから」

「…」

「彼に会うのが辛かったら、まだ会う必要はない。だから正直に言って。ルクシー君は、君に会いたくないと言われても君を嫌いになったりはしないよ」

…そうかもね。

そのくらいで嫌いになるのなら、何ヵ月も病院に通ったりはしないだろう。

でも、俺の気が済まない。

「…分かりました。会います」

「…会うの?良いの?」

「はい…良いです」

これだけ、ルクシーは俺に良くしてくれたのに。

俺は会いたくないですなんて、失礼なことは出来ない。

「…そう、分かった…。大丈夫、面会って言っても最初は五分くらいだから。良ければ、私も同席しようか。二人きりで大丈夫?」

「…大丈夫…」

「…分かった。じゃあルクシー君に伝えておくね」

会わせる顔なんてない。

でも、それ以上に…彼を拒絶する勇気がなかった。