Music of Frontier

この手紙だって、ルトリアにしてはボキャブラリーが貧弱だし、かろうじて読めるけれど、字も乱れている。

これでもルトリアは必死なのだ。あいつは、精一杯努力して、この小さな手紙を書いている。

まずは、それを讃えるべきだろう。

「頑張ってるな…ルトリア」

「本当にね」

あいつがこんなに頑張って返事を書いてくれたのだから、俺もまた手紙を書いて、ルトリアに渡してもらおう。

などと考えていると。

「…そろそろ、面会しても大丈夫かな」

唐突に、エインリー先生はそんなことを言った。

俺は思わず驚いて、目を見開いた。

「えっ…。良いんですか?」

「勿論、ルトリア君本人に確認を取ってからだけどね。そろそろ…最初は五分くらいになると思うけど、面会しても良いかもしれない」

「…!」

…会える。ルトリアに。直接。

五分だけでも。

ルトリアが帝国騎士官学校をクビになってからというもの、かれこれもう半年以上 、ルトリアには会っていなかった。

手紙でのやり取りはしてるけど、でも直接会うのとは訳が違う。

「…ルトリアは、会ってくれるでしょうか?」

「…うーん…。どうかなぁ」

…正直、怪しいところだ。

ルトリアの奴は…多分、「ルクシーに会わせる顔なんてない…」とか、馬鹿なこと考えてると思うんだ。

会わせる顔も何も、その顔見せれば良いんだよ。

会わせてもらえるのなら、今すぐにでも病室に飛び込んでやりたいけど。

「…無理はさせないでやってください、エインリー先生」

俺はそう言った。ルトリアに無理はさせたくなかった。

「あれだけしょっちゅう見舞いに来てくれてるんだから、いい加減会ってやれ」なんて詰め寄れば、ルトリアは無理して会おうとするだろうが。

それじゃ意味がない。ルトリアが自分から「会いたい」と言うまでは、会ってはいけない。

無理させて会っても、ルトリアを傷つけるだけだ。

「大丈夫、私もそのつもりだよ。ルトリア君が嫌がったら、面会はお預けだ」

「はい…そうしてください」

…正直、望み薄だが。

でも…会えたら良いな。

ルトリアは、俺にはあまり会いたくないんだろうが。

俺はそれ以上に、早くお前に会いたいんだからな。