Music of Frontier

─────…その日、病院を訪ねると。

「あぁ、ルクシー君。よく来てくれたね」

「こんにちは、エインリー先生」

「こんにちは」

最近のエインリー先生は、随分表情が明るい。

前は、俺の顔を見ると…申し訳なさそうな…落ち込んだような表情をしたから。

これも、ルトリアが少しずつ回復してきたお陰だ。

そして。

「ルクシー君、あのね。ルトリア君から手紙、預かってるんだよ」

「本当ですか」

こうして、ルトリアは俺に返事を書いてくれるようにもなった。

まだまだ長い文章は書けなくて、俺が最初にルトリアに送ったみたいな、小さなメモ用紙程度の手紙だったけど。

それでも俺にとっては、立派な手紙だ。

「ほら、これ」

「ありがとうございます」

小さなメモ用紙には、ルトリアからのメッセージが書かれていた。

ルトリアの手紙は、いつも一行程度だが…。

今日の返事は、

「『俺はもう大丈夫です』だって」

「あはは…。君に心配かけたくなくて頑張ってるんだろうねぇ」

これには、エインリー先生も笑っていた。

…全く、勝手なもんだよ。

本当に大丈夫な奴はな、面会謝絶されてないんだよ。馬鹿。

心配かけたくないのは分かるけど、それならもっと前から心配かけないように努力してくれ。

今まで散々心配かけられた後だってのに、今更強がりやがって。良い気なもんだ。

まぁ…それでも、自分で自分のことを大丈夫、と言えるようになったのだから、充分進歩だ。

勿論、俺はあいつの自己申告なんて信じないがな。

ルトリアの「心配ない」や、「大丈夫」は、「怒らないから正直に言いなさい」と同じくらい信用ならないから。

大丈夫な訳ないじゃん。

「まぁまぁ、ルクシー君。これでもルトリア君、一日中考えて書いてるから」

「そう…ですね」

返事…書いてくれてるだけ良いのだと思おう。