自宅のマンションと会社を往復するだけの毎日。誰とも話さず、黙々と仕事をこなし、帰宅しても静かな部屋が出迎えるだけだった。
ひとりの時間が増えたことで改めて、自分の心と向き合うようになった。
なぜ、僕は圭衣ちゃんにピーターズファミリーのことを言えなかったのか。なぜ、プロポーズを受けてくれない彼女に、あれほどイライラしてしまったのか。なぜ、あんなにも焦って、あのタイミングでプロポーズをしてしまったのか。
そして別れた今、彼女のことをどう思っているのか。
もう諦めて前へ進むべきなのか。それとも、最後のチャンスに賭けて、もう一度、きちんと想いを伝えるべきなのか。
……、答えは、意外なほどシンプルだった。
僕はーー圭衣ちゃんに嫌われたくなかったんだ。男のくせに、と笑われるのが怖かった。
ピーターズファミリーが好きで、ぬいぐるみを愛していることを、知られるのが怖かった。
プロポーズを断られ続けるたびに感じていた苛立ちも、本当は『待ちくたびれた』って感情の裏返しだった。
そして焦ってプロポーズした理由。それは、彼女が婚約者になってくれれば、もっと堂々と彼女を守れると思ったからだった。
……、キラリからも、周囲の無神経な言葉からも。
じゃあ、僕はこれからどうしたいんだ?
圭衣ちゃんも、ピーターズファミリーもどちらも、諦めたくなんてない。
なら、どうする?
何をすれば、もう一度彼女の隣に立てるだろう?
その時ある作戦が、ふと脳裏をよぎった。
実は僕、ピーターズファミリー30周年記念の限定ぬいぐるみを当てたのだ。ウィルとラーラ。あの子たちに、ウェディング衣装を着せて、婚約指輪のケースを持たせて。再び、圭衣ちゃんにプロポーズする。
……、子供っぽいって笑われてもいい。
これが僕だから。
それに、実はもう婚約指輪の準備も進めている。
以前、圭衣ちゃんが描いてくれた“理想の指輪のデザイン”。あれを、こっそり大事に保管していた僕は、それをもとにジュエリーショップへオーダーを出していた。
ホテル9(クー)に入っているジュエリーショップ。そこのオーナーであり、圭衣ちゃんの友人でもある紫道くんに、直接お願いしたんだ。
……、きっと、これが最後のチャンスになる。だから、悔いのないようにしなきゃいけない。
その時には、ずっと隠していたことも全部話そう。ピーターズファミリーが好きだってことも。もう、何も失いたくないから。
そして、ぬいぐるみのウェディング衣装。
これは葉子ちゃんに協力をお願いするつもりだ。
先日、美愛ちゃんから聞いた。Cool Beautyとピーターズファミリーのコラボ企画が、ついに実現するらしい。
それなら、葉子ちゃんの力で、今回のぬいぐるみに“特注扱い”の衣装をつけられないか。
あの時、圭衣ちゃんが『いつか着てみたい』と言っていた、あのウェディングドレスのデザインで。
……葉子ちゃん、協力してくれるかな。
願うように天井を見上げたその夜、僕の心の奥底でずっとくすぶっていた炎が、静かに燃え上がっていた。
もう一度、圭衣ちゃんの手を取るために。
僕は、僕らしく、最後の賭けに出る。
ひとりの時間が増えたことで改めて、自分の心と向き合うようになった。
なぜ、僕は圭衣ちゃんにピーターズファミリーのことを言えなかったのか。なぜ、プロポーズを受けてくれない彼女に、あれほどイライラしてしまったのか。なぜ、あんなにも焦って、あのタイミングでプロポーズをしてしまったのか。
そして別れた今、彼女のことをどう思っているのか。
もう諦めて前へ進むべきなのか。それとも、最後のチャンスに賭けて、もう一度、きちんと想いを伝えるべきなのか。
……、答えは、意外なほどシンプルだった。
僕はーー圭衣ちゃんに嫌われたくなかったんだ。男のくせに、と笑われるのが怖かった。
ピーターズファミリーが好きで、ぬいぐるみを愛していることを、知られるのが怖かった。
プロポーズを断られ続けるたびに感じていた苛立ちも、本当は『待ちくたびれた』って感情の裏返しだった。
そして焦ってプロポーズした理由。それは、彼女が婚約者になってくれれば、もっと堂々と彼女を守れると思ったからだった。
……、キラリからも、周囲の無神経な言葉からも。
じゃあ、僕はこれからどうしたいんだ?
圭衣ちゃんも、ピーターズファミリーもどちらも、諦めたくなんてない。
なら、どうする?
何をすれば、もう一度彼女の隣に立てるだろう?
その時ある作戦が、ふと脳裏をよぎった。
実は僕、ピーターズファミリー30周年記念の限定ぬいぐるみを当てたのだ。ウィルとラーラ。あの子たちに、ウェディング衣装を着せて、婚約指輪のケースを持たせて。再び、圭衣ちゃんにプロポーズする。
……、子供っぽいって笑われてもいい。
これが僕だから。
それに、実はもう婚約指輪の準備も進めている。
以前、圭衣ちゃんが描いてくれた“理想の指輪のデザイン”。あれを、こっそり大事に保管していた僕は、それをもとにジュエリーショップへオーダーを出していた。
ホテル9(クー)に入っているジュエリーショップ。そこのオーナーであり、圭衣ちゃんの友人でもある紫道くんに、直接お願いしたんだ。
……、きっと、これが最後のチャンスになる。だから、悔いのないようにしなきゃいけない。
その時には、ずっと隠していたことも全部話そう。ピーターズファミリーが好きだってことも。もう、何も失いたくないから。
そして、ぬいぐるみのウェディング衣装。
これは葉子ちゃんに協力をお願いするつもりだ。
先日、美愛ちゃんから聞いた。Cool Beautyとピーターズファミリーのコラボ企画が、ついに実現するらしい。
それなら、葉子ちゃんの力で、今回のぬいぐるみに“特注扱い”の衣装をつけられないか。
あの時、圭衣ちゃんが『いつか着てみたい』と言っていた、あのウェディングドレスのデザインで。
……葉子ちゃん、協力してくれるかな。
願うように天井を見上げたその夜、僕の心の奥底でずっとくすぶっていた炎が、静かに燃え上がっていた。
もう一度、圭衣ちゃんの手を取るために。
僕は、僕らしく、最後の賭けに出る。



