「紫道、久しぶりじゃん!」
思わず声が弾んだ。気心の知れた友人と、偶然の再会。その瞬間だけは、心がふっと軽くなった気がした。
「おまえ、暇ならメシ行こうぜ」
紫道はそう言うが早いか、私の返事も聞かずに腕を優しく掴んでくる。強引だけど、どこか懐かしいその引っぱり方に、思わず微笑んでしまった。
彼はそのまま、サクラスクエアの入口へと向かっていく。
……、たまには、誰かとご飯を食べるのも悪くないかも。そう思ったのは、本当に久しぶりだった。
大和と別れてからというもの、
ご飯なんて、コンビニで適当に済ませるか、そもそも食べないかのどちらかだった。
誰かと並んで食事をするなんて、いったい、いつぶりだろう。
けれど、その足がふと止まる。
ここは嫌だ。
サクラスクエアも、ミッドタウンも、嫌だ。
ここには雅さんと大和の会社がある。涼介先生の法律事務所もある。近くには仁さんのホテル9(クー)や、雅さんと大和のお兄さんたちの伊乃国屋の本社も。
……、できることなら、今すぐにでもこの場所から離れたい。
私はサクラスクエアの入口で立ち尽くしてしまった。その間、紫道が少し離れた場所で私のことを心配そうに見つめていたことに気づいていなかった。
「じゃあ、こっちにしようか」
再び私の腕を取ると、紫道は優しい手つきで歩き出した。彼と並んで地下鉄の駅へと向かう。
「俺の知り合いの店でいいか? 庶民的な焼き鳥屋なんだけれど、おまえ、好きだったよな?」
彼のその言葉に、思わず心がほぐれる。そうだった、あの店。アメリカから帰ってきたばかりの頃、一緒に何度か行ったんだ。
穏やかに笑う紫道とともに、私は地下鉄に乗り、ミッドタウンのきらびやかな街並みを、そっと背にした。
そして私たちは知らなかった。サクラスクエアの一角、カフェBon Bonの大きな窓ガラス越しに。誰かがスマートフォンを構え、私たちの姿をこっそり録画していたことを。
思わず声が弾んだ。気心の知れた友人と、偶然の再会。その瞬間だけは、心がふっと軽くなった気がした。
「おまえ、暇ならメシ行こうぜ」
紫道はそう言うが早いか、私の返事も聞かずに腕を優しく掴んでくる。強引だけど、どこか懐かしいその引っぱり方に、思わず微笑んでしまった。
彼はそのまま、サクラスクエアの入口へと向かっていく。
……、たまには、誰かとご飯を食べるのも悪くないかも。そう思ったのは、本当に久しぶりだった。
大和と別れてからというもの、
ご飯なんて、コンビニで適当に済ませるか、そもそも食べないかのどちらかだった。
誰かと並んで食事をするなんて、いったい、いつぶりだろう。
けれど、その足がふと止まる。
ここは嫌だ。
サクラスクエアも、ミッドタウンも、嫌だ。
ここには雅さんと大和の会社がある。涼介先生の法律事務所もある。近くには仁さんのホテル9(クー)や、雅さんと大和のお兄さんたちの伊乃国屋の本社も。
……、できることなら、今すぐにでもこの場所から離れたい。
私はサクラスクエアの入口で立ち尽くしてしまった。その間、紫道が少し離れた場所で私のことを心配そうに見つめていたことに気づいていなかった。
「じゃあ、こっちにしようか」
再び私の腕を取ると、紫道は優しい手つきで歩き出した。彼と並んで地下鉄の駅へと向かう。
「俺の知り合いの店でいいか? 庶民的な焼き鳥屋なんだけれど、おまえ、好きだったよな?」
彼のその言葉に、思わず心がほぐれる。そうだった、あの店。アメリカから帰ってきたばかりの頃、一緒に何度か行ったんだ。
穏やかに笑う紫道とともに、私は地下鉄に乗り、ミッドタウンのきらびやかな街並みを、そっと背にした。
そして私たちは知らなかった。サクラスクエアの一角、カフェBon Bonの大きな窓ガラス越しに。誰かがスマートフォンを構え、私たちの姿をこっそり録画していたことを。



