婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

「……、あたしは、大和さんを責めたり、陥れようなんて思ってないよ」


葉子はまっすぐに2人を見つめながら、静かに口を開いた。

「そっちと同じで、あたしたちも圭衣のことが心配なの。聞きたいことは山ほどあるけど……、でも、これだけは教えてほしい。──大和さんの、圭衣への気持ちを」


リビングに、重たい沈黙が落ちる。
仁と雅がちらりと目を合わせ、言葉を探すように視線を落とした。


「……、大和は、まだ圭衣ちゃんを想ってるよ」


やがて、雅が苦しげに呟いた。


「たぶん……、圭衣ちゃんと一緒になれなかったら、あいつは生涯独身でいるんじゃないかな」


仁が続けるように口を開いた。


「あいつにも事情があるんだ。全部が全部、自分で選んだわけじゃねぇ。けど……、圭衣ちゃんを悲しませた自覚はある。今は……、臆病になっちまってる」

「圭衣も……、大和さんのこと、好きだよ」


葉子の声がかすかに揺れる。


「だから、忘れようとして無理してるの。圭衣って、昔から頑固だからさ。自分から歩み寄るなんて、できないのよ」


その時、ずっと黙って話を聞いていた美愛が、思いきって声を上げた。

「あ、あ、あのねっ……!」


皆の視線が一斉に彼女に向く。


「私たち、協力して2人をもう一度、一緒にさせられないかな? だって、好き同士なのに、別れるなんておかしいよ……!」


美愛の言葉に、葉子も頷いた。


「そうだね。あたしたち、みんな大和さんと圭衣に助けられて、今こうして結婚できて、幸せに暮らせてるもんね。だったら今度は、あたしたちが2人を助ける番じゃない?」


──4人の脳裏に、それぞれの過去の出来事がよぎった。


美愛が、雅の浮気を疑って家を飛び出したとき。ひどく落ち込み、酒に溺れていた雅の世話をしてくれたのは大和であり、彼女との仲を取り持つために動いてくれたのが仁だった。


また、妊娠を隠したまま仁の前から姿を消した葉子の居場所を探し出し、誰よりも早く見つけ出したのも、大和だった。


そう、あの2人は、みんなの“支え”だった。


その2人が今、互いに好き合いながら、すれ違っているだけで離れてしまおうとしている。だったら今度は、自分たちが支える番だ。


温かな決意が、静かにリビングを包んだ。