婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

週明けの月曜日。
圭衣と話をした葉子は、彼女の口からようやく詳細を聞き出した。


これまでに圭衣から断片的に聞いていた話、美愛が偶然耳にした雅と大和のやりとり、そして今回の圭衣の告白。すべてをつなぎ合わせていくうちに、葉子の中でひとつの確信が芽生える。やはり、大和の話も直接聞くべきだ。だが、そのことは圭衣には一切告げない。彼女の性格を考えれば、今さら大和の名前を出すだけで拒絶されかねないからだ。


それでも、話し合って分かったのは、圭衣がまだ大和を想っているという事実。素直になれない性格と、強がりからくる冷たい態度。圭衣の心の奥には、今も彼への想いが確かに残っている。

そして、もう一つ気がかりなこと──
圭衣の背後で何かが動いている気配があった。父親であるジョセフがどうやら何らかの形で関与しているようだが、誰も圭衣本人にはその経緯を話していない。彼女だけが蚊帳の外に置かれている。


一方、仕事では大きな動きがあった。Cool Beautyとピーターズファミリーとの新たなコラボ企画の話が進みつつある。葉子にとっては、これが“賭け”だった。ピーターズが関われば、圭衣はきっとアメリカには行かず、日本に残ってくれるはず。その期待は、ある瞬間に確信へと変わる。圭衣がコラボの話を聞いた時、その瞳にほんの一瞬、かすかな光が宿ったのを、葉子は見逃さなかったのだ。


やっぱり、今の仕事も、ピーターズも、大和さんのことも……、全部、好きなんだ。


ただ、彼と顔を合わせるのがつらくて、心が追いつかなくて、だから逃げたかっただけ。
その気持ちは痛いほどよくわかる。葉子自身が、過去にすべてから逃げ出した経験があるからだ。


「仁と雅さんにも早めに相談しておいたほうがいいわね。圭衣が本当にアメリカへ行ってしまう前に、きちんと片をつけなきゃ」


そう心に決めた葉子は、その日のうちに美愛へメッセージを送った。


『週末、九条家の離れで集まる。雅さんも連れてきて』


すべては、姉の未来のために。