大和と圭衣がお互いに素直になれず、関係をこじらせている間、妹の葉子と美愛は、それぞれの場所から姉を案じながら、水面下で“大和”についての情報を探り始めていた。
水曜日の夜。
いきなり圭衣から二人にメッセージが届く。しかも、たった一言『完全に終わった』。
共同経営者である葉子には、さらに『今週いっぱい休む』と追伸が添えられていた。
電話もつながらず、メッセージも既読にならない。ふだんから責任感の強い圭衣のことだ。どれだけの覚悟でこの言葉を送ってきたのか葉子も美愛も、胸の奥がきゅっと締めつけられるようだった。
葉子はすぐに、休暇は了承すると返信した上で、『月曜の業務ミーティングには必ず出席するように。……、逃げるなよ』と念を押した。つい数週間前、三姉妹で時間をかけて業務の引き継ぎについて話し合ったばかりだった。
葉子には分かっていた。圭衣が本当はCool Beautyを去りたくないことも、日本を離れたくないことも。そして何より、ピーターズやロリータファッションをあきらめたくないことも。
それなのに、突然すべてを手放そうとしている圭衣。葉子の胸の奥には、じわりと嫌な予感が広がっていた。
圭衣はいつだって、自分たちの味方だった。
去年、葉子が誰にも何も言わず姿を消した時だって、責めることなく、ただ助けてくれた。だからこそ、今度は自分たちが支える番だ。
冷静な判断力を持つ葉子は、大和の話も一度はきちんと聞くべきだと考え、動き出す。
まずは夫・仁にリモート勤務から出社へ切り替える旨を伝え、本宅にいる義母・咲子に理由を説明した上で、双子の世話のシッター手配を依頼する。
今は会社を守らなければならない。社員たちを路頭に迷わせるわけにはいかない。そう肚を括り、葉子は静かに次の一手を考えはじめていた。
水曜日の夜。
いきなり圭衣から二人にメッセージが届く。しかも、たった一言『完全に終わった』。
共同経営者である葉子には、さらに『今週いっぱい休む』と追伸が添えられていた。
電話もつながらず、メッセージも既読にならない。ふだんから責任感の強い圭衣のことだ。どれだけの覚悟でこの言葉を送ってきたのか葉子も美愛も、胸の奥がきゅっと締めつけられるようだった。
葉子はすぐに、休暇は了承すると返信した上で、『月曜の業務ミーティングには必ず出席するように。……、逃げるなよ』と念を押した。つい数週間前、三姉妹で時間をかけて業務の引き継ぎについて話し合ったばかりだった。
葉子には分かっていた。圭衣が本当はCool Beautyを去りたくないことも、日本を離れたくないことも。そして何より、ピーターズやロリータファッションをあきらめたくないことも。
それなのに、突然すべてを手放そうとしている圭衣。葉子の胸の奥には、じわりと嫌な予感が広がっていた。
圭衣はいつだって、自分たちの味方だった。
去年、葉子が誰にも何も言わず姿を消した時だって、責めることなく、ただ助けてくれた。だからこそ、今度は自分たちが支える番だ。
冷静な判断力を持つ葉子は、大和の話も一度はきちんと聞くべきだと考え、動き出す。
まずは夫・仁にリモート勤務から出社へ切り替える旨を伝え、本宅にいる義母・咲子に理由を説明した上で、双子の世話のシッター手配を依頼する。
今は会社を守らなければならない。社員たちを路頭に迷わせるわけにはいかない。そう肚を括り、葉子は静かに次の一手を考えはじめていた。



