婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

先程、実家でもお仏壇に手を合わせたけれど
今一度、おじいちゃまの眠るこの場所で、目を閉じる。


心の中で語りかける。……、いや、きっと語りかけていたのは、私だけだった。それでも、聞いてほしかったの。大好きなおじいちゃまに大和とのことも、仕事のことも、もう全部投げ出してアメリカに帰りたいって思っていることも。


守られていたことを知らずに、自分から終わりにしてしまった。『私は間違っていない』そう言い聞かせていたけれど、どこかでずっと、心の奥がチクチク痛んでいる。


あの日、彼が怒りをぶつけて去っていったあと、私は何度も、何度も連絡を試みた。
でも、大和は昨夜から今の今まで、一度も返してくれない。


きっと、それが答えなんだ。私のことなんて、もう……、どうでもよくなったんだよね。そう思うたび、胸がギュッと締め付けられる。

をゆっくりと開けて、『花村家之墓』と刻まれた竿石を見つめる。
浮かんでくるのは、笑っていた──おじいちゃまの顔。


泣き疲れて、もう涙なんて出ないと思っていたのに。それなのに……、頬を伝う雫が、あとからあとからこぼれ落ちていく。


そのときだった。


ふわりと、背中にあたたかいぬくもりを感じた。風でもなく、日差しでもない。やさしく包み込まれるような……、懐かしい温かさ。


(……、あ)


思わず胸の奥がきゅっとなる。これはきっとおじいちゃま。もういないはずのその人が、今だけはそっと後ろから抱きしめてくれている。そんな気がした。


ふんわりとした優しさに、心がじんわりとほどけていく。何も言わず、何も聞かず、ただ『そばにいるよ』と伝えてくれるような、あたたかな気配。


圭衣は、小さく息を吐いた。さっきまで胸の奥に刺さっていたとげが、少しだけ和らいだ気がした。


翔吾との別れでは、泣かなかった。
あのときの自分は、きっと強がっていた。
なのに自分から突き放したはずの彼を、今もこんなに、強く、愛してる。


……、もし、あの時、私がちゃんと彼の話を聞いていたら。


もし、彼が守ってくれていたことを、知っていたら。


結果は、変わっていたのかな?