婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

「いいんだよ、今日は。また何かあった時はいつでも寄りな」

「お、おばちゃん、どうして……?」

「うふふ、圭衣ちゃんの顔を見れば、あんたが元気がないことくらいわかるさ。あっ、あたしだけじゃないよ、この商店街のみんなね」


やっぱりみんな、わかっていたんだ……、昔から。


「圭衣ちゃんのおじいちゃん、大先生にも頼まれたし、あんたたちのこと、特に圭衣ちゃん。この辺の住人はみんな大先生とあんたの両親、ジョセフさんと久美ちゃんにお世話になっているからね」


おじいちゃまは商店街を含むこの近所が困っている時は、必ず手を差し伸べていたという、何の見返りも要求せずに。そんなおじいちゃまが初めてみんなにお願いしたことがあった。それは私たち姉妹のこと、特に私のことをこれからもよろしくと。『圭衣は長女だからか、いろいろ我慢してしまう。悲しいことや辛いことも。あの子は甘え下手なんだ』と言っていたらしい。


それにおじいちゃまは経済的に苦しい人からは、診察料を取らなかった。午後の長い休憩時間に近所の訪問診療も行い、それは今では母さまが受け継いだ。表向きはレディースクリニックになっているが、特にご近所の年配の方々を支えている。昔からの人情深い下町の良き風習がまだここには残っていた。