婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

今の自分が抱えているこの苦しさ。誰かに話せば、少しは楽になれるんだろうか。


そんな一抹の期待を込めて、雅にこれまでの出来事をすべて話した。圭衣ちゃんとのすれ違い、今夜の決定的な別れ。それから、キラリのストーカー行為のことまで。


バーベキューの頃には、もう綻びは始まっていた。慶智の王子たちは薄々感づいていたようで、なかでも──雅は、美愛ちゃんのほんの些細な変化から、何かを察していたらしい。


「……、僕さ、ピーターズファミリーのこと、最後まで言えなかったんだ」


椅子に沈み込むようにして、俺はぼそりと口を開く。


「言うタイミングなんて、何度でもあったのに。でも……、もし受け入れてもらえなかったらって思ったら、怖くてさ。だったら、黙って結婚しちゃえばいいって……、バチが当たったんだよ。きっと」


「バカ言うなよ」


雅がすかさず言い返す。その口調は荒っぽいけれど、どこか優しさがにじんでいた。


「まだ終わったわけじゃねぇだろ」

「……、無理だよ。圭衣ちゃん、俺の顔なんか見たくないってさ」


声が震えていた。自分でも情けないとは思う。けれど、もう張りつめていられなかった。


「それで諦めんのか?」

雅がぐっと前のめりになって、俺の目を真っ直ぐに見据える。


「他の男と結婚して、そいつが『旦那です』って顔して、おまえの隣に立っても本当に何も言わずにいられるのか?」


想像しただけで、胸が潰れそうになった。
──無理だ。そんなの、無理に決まってる。


でも、どうすればいいのかわからなかった。
怖くて、情けなくて、悔しくて。全部がごちゃまぜになって、言葉にならない。


俺は、ただ静かに首を横に振った。その隣で、雅が無言で段ボール箱を持ち上げる。


「……、よし。行くぞ」

短くそう言って、玄関へ向かおうとする雅の背中に、思わず顔を上げた。


「今夜はうちに泊まれ。おまえ、今のまま放っといたら、確実に潰れるぞ」


新婚の家に、酔った勢いで転がり込むなんて、本当なら最低だ。でも今夜だけは、どうか許してほしい。誰かのそばにいないと、もう立っていられなかった。