玄関の開く音がしたのと、炊飯器の炊き上がりを知らせる電子音がほぼ同時だった。夕飯の盛り付けをしていた僕は、思わず顔を上げる。
その直後──勢いよく廊下のドアが開き、圭衣ちゃんがリビングに入ってきた。
バッグと上着をソファに放り投げるその動作に、思わず笑みが漏れる。何週間も顔を合わせていなかったけれど、やっぱり彼女は彼女だなって。こうして何気ない仕草ひとつで、僕の心を温かくしてくれる。
「おかえり、圭衣ちゃん」
振り返った彼女にそう声をかけると──
無表情のまま僕を見つめた圭衣ちゃんは、何も言わず踵を返し寝室へと向かっていった。
着替えに行ったんだろう、そう思ってソファに腰を下ろした僕は、少しの間そのまま待っていた。
だが──数分後に戻ってきた圭衣ちゃんの腕には、段ボール箱が抱えられていた。
リビングの床にその箱を乱暴に置くと、彼女は廊下へと急ぎ足で向かう。すぐに戻ってくると、キッチンで何かを取り、無言で箱の中へ投げ入れた。僕がいつも使っていたカップと歯ブラシだった。
その手つきに、胸の奥が嫌な予感でざわめいた。
彼女はバッグからカードキーを取り出すと、それを無言で僕に差し出す。
「これで全てだと思う。あなたの所にある私の私物は、捨ててくれて構わない。この部屋の鍵だけ返してくれれば」
――聞いたことのないほど冷たい声だった。
まるで機械のように温度のない言葉。僕の中に、氷のようなものがスッと入り込んできた。
圭衣ちゃんの口から出たその言葉が、心の奥深くに突き刺さる。あまりにも現実味がなくて、すぐには意味を理解できなかった。
でも、その声に宿った本気だけは──
肌で、心で、痛いほど感じ取ってしまった。
その直後──勢いよく廊下のドアが開き、圭衣ちゃんがリビングに入ってきた。
バッグと上着をソファに放り投げるその動作に、思わず笑みが漏れる。何週間も顔を合わせていなかったけれど、やっぱり彼女は彼女だなって。こうして何気ない仕草ひとつで、僕の心を温かくしてくれる。
「おかえり、圭衣ちゃん」
振り返った彼女にそう声をかけると──
無表情のまま僕を見つめた圭衣ちゃんは、何も言わず踵を返し寝室へと向かっていった。
着替えに行ったんだろう、そう思ってソファに腰を下ろした僕は、少しの間そのまま待っていた。
だが──数分後に戻ってきた圭衣ちゃんの腕には、段ボール箱が抱えられていた。
リビングの床にその箱を乱暴に置くと、彼女は廊下へと急ぎ足で向かう。すぐに戻ってくると、キッチンで何かを取り、無言で箱の中へ投げ入れた。僕がいつも使っていたカップと歯ブラシだった。
その手つきに、胸の奥が嫌な予感でざわめいた。
彼女はバッグからカードキーを取り出すと、それを無言で僕に差し出す。
「これで全てだと思う。あなたの所にある私の私物は、捨ててくれて構わない。この部屋の鍵だけ返してくれれば」
――聞いたことのないほど冷たい声だった。
まるで機械のように温度のない言葉。僕の中に、氷のようなものがスッと入り込んできた。
圭衣ちゃんの口から出たその言葉が、心の奥深くに突き刺さる。あまりにも現実味がなくて、すぐには意味を理解できなかった。
でも、その声に宿った本気だけは──
肌で、心で、痛いほど感じ取ってしまった。



