婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

今さら、自分が彼に言い放った言葉は取り消せない。短気な自分の性分が、本当に嫌になる。でも後悔しても遅い。大切な人を、自分の手で手放してしまった。その事実だけが、胸に重くのしかかる。


──どうして、もっと冷静になれなかったの?


……、だって、まるで何事もなかったように振る舞う大和が、許せなかった。私は、あんなに傷ついたのに。それなのに平然と戻ってきて、以前と同じように振る舞って。


同じ目に遭わせてやりたいと思った。私と同じ悲しみを味わえって。そうすれば、少しは気が済むと思った。


……、仕返しをしたかった。私は、そういう人間だったんだ。


最低だな。
性格、悪すぎる。


じゃあ──
仕返しをした今、どんな気分?


……、最悪。やらなきゃよかったって、心の底から思ってる。


大和に謝る?


無理。だって私は、もう取り返しのつかないことをしてしまった。





スマホを手に取り、葉子と美愛に短いメッセージを送る。


『完全に終わった』──それだけ。


葉子には「今週いっぱい有給を取る」とだけ伝えた。


本当は、申し訳なくて仕方ない。でも今は、仕事のことを考える余裕なんてない。


葉子は、私よりずっとしっかりしてる。父さまからも経営の才能を認められた、優秀な経営者。……、だから、任せても大丈夫だと思える。


ごめん、葉子……。
迷惑をかけてしまって、本当にごめん。


こんなにも簡単に──
人って夢を手放せるものなんだ。





その後、妹たちからの電話が何度も鳴ったけれど、今は……、誰とも話したくなかった。