勢いよく玄関のドアを開けた私は、手に持っていたバッグと薄手のコートを反射的にソファへ放り投げた。
――いつもの習慣。だけど、今日ばかりはその先の動きで凍りつくことになるなんて、思ってもみなかった。
キッチンに目をやった瞬間、そこに立っていた人物に息が止まった。
「おかえり、圭衣ちゃん」
聞きたくても、拒まれて聞けなかった声。数週間ぶりに見る、ワンコみたいな笑顔。嘘でしょ……、なんでここにいるの? なんで今さら?
会いたかった。ずっと、会いたかった。けれど、それ以上に込み上げてきたのは、怒りと悲しみが入り混じった、どうしようもない感情の渦。ドロドロとした熱いものが、血液に混ざって全身を駆け巡っていくのがわかる。
どうして……、
どうして連絡をくれなかったの?
どうして私を、ずっと無視したの?
……、なのに、どうして何事もなかったような顔で、そこに立っていられるの?
やっと会えたのに。嬉しいはずなのに。この胸の奥を締めつけるのは、寂しさでも未練でもなく、裏切られた怒りだった。
こんなふうに心の底から腹を立てたのは、いつ以来だろう。
ああ、そうだ。
元友人のいよりが──あの子が、妹の美愛を泣かせて、雅さんとの婚約をめちゃくちゃにしかけた、あの時以来かもしれない。
……、いや、それ以上だ。
気がつけば、もう寝室に向かってた。頭じゃなく、体が勝手に動いてた。
「ふざけないでよ……!」
段ボールを引っ張り出し、手当たり次第に大和の私物を詰め込んでいく。見つけたそばからポイポイ放り込んで、心の中で何度も怒鳴ってた。私の作った服なんか、もう着たくなければ捨てればいい。
……、というか、全部捨ててやりたいくらい。
私の空間に、大和の痕跡なんか、もう一ミリだって残しておきたくなかった。
箱を抱え、リビングへと戻る。
――いつもの習慣。だけど、今日ばかりはその先の動きで凍りつくことになるなんて、思ってもみなかった。
キッチンに目をやった瞬間、そこに立っていた人物に息が止まった。
「おかえり、圭衣ちゃん」
聞きたくても、拒まれて聞けなかった声。数週間ぶりに見る、ワンコみたいな笑顔。嘘でしょ……、なんでここにいるの? なんで今さら?
会いたかった。ずっと、会いたかった。けれど、それ以上に込み上げてきたのは、怒りと悲しみが入り混じった、どうしようもない感情の渦。ドロドロとした熱いものが、血液に混ざって全身を駆け巡っていくのがわかる。
どうして……、
どうして連絡をくれなかったの?
どうして私を、ずっと無視したの?
……、なのに、どうして何事もなかったような顔で、そこに立っていられるの?
やっと会えたのに。嬉しいはずなのに。この胸の奥を締めつけるのは、寂しさでも未練でもなく、裏切られた怒りだった。
こんなふうに心の底から腹を立てたのは、いつ以来だろう。
ああ、そうだ。
元友人のいよりが──あの子が、妹の美愛を泣かせて、雅さんとの婚約をめちゃくちゃにしかけた、あの時以来かもしれない。
……、いや、それ以上だ。
気がつけば、もう寝室に向かってた。頭じゃなく、体が勝手に動いてた。
「ふざけないでよ……!」
段ボールを引っ張り出し、手当たり次第に大和の私物を詰め込んでいく。見つけたそばからポイポイ放り込んで、心の中で何度も怒鳴ってた。私の作った服なんか、もう着たくなければ捨てればいい。
……、というか、全部捨ててやりたいくらい。
私の空間に、大和の痕跡なんか、もう一ミリだって残しておきたくなかった。
箱を抱え、リビングへと戻る。



