最近、時間の流れが妙に遅く感じる。そう思うのは私だけだろうか?
今日は水曜日。週の真ん中……、のはずなのに、感覚的にはもう金曜日のような疲れが体にまとわりついている。何度もスマホのカレンダーを確認するが、やっぱり今日は水曜日だった。
社長室兼デザイン室で、葉子から言われていた業務整理をしているうちに、気づけば時計の針は18時を回っていた。コンピューターをシャットダウンし、肩を回しながら立ち上がる。
先週、妹たちと話し合ってから、私は少しずつ仕事の整理を進めている。通常業務の合間に行っているから、正直思っていたよりも進みは遅い。けれどこれは、私一人の都合で進めていい話ではない。長年一緒に働いてきた社員たちに対して責任がある。私がいなくなっても、今まで通り仕事が回るように、ちゃんと下地を整えておかなければならないのだ。
ミッドタウン駅へと向かう帰り道、ビル街の歩道は、会社帰りの人々でごった返していた。列をなして駅へ向かうその光景は、まるで疲れきった奴隷たちがようやく解放され、黙々と歩いているようにも見える。
──まあ、私もそのひとりだけど。
駅に着き、混み合ったホームで電車を待つ。やはり空席はない。乗り込んだ車両では、流れに身を任せるように中央の吊り革を掴み、やっと一息つく。こういう時ばかりは、自分の長身に感謝したくなる。
ゆらゆら揺れる電車の中、ぼんやりと窓の外を眺めながら、この一ヶ月を思い返す。
すべての始まりは──ピーターズファミリーのコンベンションだった。
あの日を境に、大和に対する心のざわつきが芽生えた。
2週目には、キラリについて調べ始めた。
そのことで大和を怒らせてしまい、連絡も返ってこなくなったけれど……、週末には、思い切ってキラリを偵察しに行った。
3週目には、家族の集まりをキャンセルした。彼に、顔を合わせる自信がなかったから。
4週目、妹たちと、会社のこと、そして自分自身の将来について真剣に話し合った。
そして今──もう4月に入っている。時間は確実に流れているのに、私の心はまだ彼の隣にいるまま。大和と会えなくなって、もう三週間が過ぎた。
……、それでも、まだ会いたいと思ってしまう。だって、私は彼のことが好きだから。
だけど、彼にとって私は──もう過去の存在なのかもしれない。そう思うと、胸の奥がじくりと痛む。
──だから。
私も、前を向こう。
新しいスタートを切る。
そう、決めた。
今日は水曜日。週の真ん中……、のはずなのに、感覚的にはもう金曜日のような疲れが体にまとわりついている。何度もスマホのカレンダーを確認するが、やっぱり今日は水曜日だった。
社長室兼デザイン室で、葉子から言われていた業務整理をしているうちに、気づけば時計の針は18時を回っていた。コンピューターをシャットダウンし、肩を回しながら立ち上がる。
先週、妹たちと話し合ってから、私は少しずつ仕事の整理を進めている。通常業務の合間に行っているから、正直思っていたよりも進みは遅い。けれどこれは、私一人の都合で進めていい話ではない。長年一緒に働いてきた社員たちに対して責任がある。私がいなくなっても、今まで通り仕事が回るように、ちゃんと下地を整えておかなければならないのだ。
ミッドタウン駅へと向かう帰り道、ビル街の歩道は、会社帰りの人々でごった返していた。列をなして駅へ向かうその光景は、まるで疲れきった奴隷たちがようやく解放され、黙々と歩いているようにも見える。
──まあ、私もそのひとりだけど。
駅に着き、混み合ったホームで電車を待つ。やはり空席はない。乗り込んだ車両では、流れに身を任せるように中央の吊り革を掴み、やっと一息つく。こういう時ばかりは、自分の長身に感謝したくなる。
ゆらゆら揺れる電車の中、ぼんやりと窓の外を眺めながら、この一ヶ月を思い返す。
すべての始まりは──ピーターズファミリーのコンベンションだった。
あの日を境に、大和に対する心のざわつきが芽生えた。
2週目には、キラリについて調べ始めた。
そのことで大和を怒らせてしまい、連絡も返ってこなくなったけれど……、週末には、思い切ってキラリを偵察しに行った。
3週目には、家族の集まりをキャンセルした。彼に、顔を合わせる自信がなかったから。
4週目、妹たちと、会社のこと、そして自分自身の将来について真剣に話し合った。
そして今──もう4月に入っている。時間は確実に流れているのに、私の心はまだ彼の隣にいるまま。大和と会えなくなって、もう三週間が過ぎた。
……、それでも、まだ会いたいと思ってしまう。だって、私は彼のことが好きだから。
だけど、彼にとって私は──もう過去の存在なのかもしれない。そう思うと、胸の奥がじくりと痛む。
──だから。
私も、前を向こう。
新しいスタートを切る。
そう、決めた。



