おいおい、泣きたいのは……、僕のほうなんだけどな。
キラリの父親が深々と頭を下げたあと、ピーターズファミリークラブ関係と僕への慰謝料の話が出た。彼女を二度と関わらせないこと、そして必要なら入院させるという申し出まであった。誓約書の提出と、今後一切の接触を禁ずる旨の約束も含めて。
――これで、ようやく終わるのかもしれない。
ただ……。
僕も、言わなきゃいけないことがある。
涼介に目で合図を送ると、彼はほんのわずかに首を横に振った。
まだ早い、そういうことか。
「工藤キラリ様、ご両親のご提案にご同意いただけますか?」
涼介の低く、冷静な声が応接室に響く。
「あなたの行為は、私の依頼人のみならず、その周囲の人間にも著しい精神的苦痛と損害を与えています。これ以上の事態を避けるためにも、円満な解決を望んでおります。ですが、もしご同意いただけない場合は、しかるべき手続きを取らせていただきます」
キラリは俯いたまま、小さく頷いた。
その後、鈴音ちゃんが用意した誓約書や覚書に、彼女は黙々と署名・捺印していく。ときおり、手が小刻みに震えていた。
ようやく涼介から合図をもらい、僕はずっと気になっていたことを尋ねた。
「工藤さん。どうしてあのコンベンションで、他のクラブにあんな態度を取ったの?」
キラリはしばらく沈黙したあと、ぽつりと口を開く。
「……、丸大くんに、私だけを見てほしかったから。強く出れば、みんなが私を気にしてくれると思って……。ねぇ、本当は誰とも付き合ってないんでしょう? だったら、私で……」
その言葉を遮るように、僕はゆっくりと、でもはっきりと告げた。
「違う。僕には、心から愛していて──結婚を考えてる彼女がいるんだ」
キラリの目が揺れる。
「君には、気持ちは一ミリもない。これまでも、そしてこれからも。二人きりになったこともないし、連絡を取り合ったこともない。だから……、これで終わりにしよう。君のSNSにも僕に関する投稿があるはずだ。それも全部、削除して」
静かに、けれど心を込めて言った。
彼女が何も言わずに頷いたのを見て、ようやく肩の力が抜けた気がした。
やっと片付いた。次は──僕にとって、いちばん大切な人との関係を修復する番だ。
圭衣ちゃん。
待ってて。もう絶対に、離さないから。
キラリの父親が深々と頭を下げたあと、ピーターズファミリークラブ関係と僕への慰謝料の話が出た。彼女を二度と関わらせないこと、そして必要なら入院させるという申し出まであった。誓約書の提出と、今後一切の接触を禁ずる旨の約束も含めて。
――これで、ようやく終わるのかもしれない。
ただ……。
僕も、言わなきゃいけないことがある。
涼介に目で合図を送ると、彼はほんのわずかに首を横に振った。
まだ早い、そういうことか。
「工藤キラリ様、ご両親のご提案にご同意いただけますか?」
涼介の低く、冷静な声が応接室に響く。
「あなたの行為は、私の依頼人のみならず、その周囲の人間にも著しい精神的苦痛と損害を与えています。これ以上の事態を避けるためにも、円満な解決を望んでおります。ですが、もしご同意いただけない場合は、しかるべき手続きを取らせていただきます」
キラリは俯いたまま、小さく頷いた。
その後、鈴音ちゃんが用意した誓約書や覚書に、彼女は黙々と署名・捺印していく。ときおり、手が小刻みに震えていた。
ようやく涼介から合図をもらい、僕はずっと気になっていたことを尋ねた。
「工藤さん。どうしてあのコンベンションで、他のクラブにあんな態度を取ったの?」
キラリはしばらく沈黙したあと、ぽつりと口を開く。
「……、丸大くんに、私だけを見てほしかったから。強く出れば、みんなが私を気にしてくれると思って……。ねぇ、本当は誰とも付き合ってないんでしょう? だったら、私で……」
その言葉を遮るように、僕はゆっくりと、でもはっきりと告げた。
「違う。僕には、心から愛していて──結婚を考えてる彼女がいるんだ」
キラリの目が揺れる。
「君には、気持ちは一ミリもない。これまでも、そしてこれからも。二人きりになったこともないし、連絡を取り合ったこともない。だから……、これで終わりにしよう。君のSNSにも僕に関する投稿があるはずだ。それも全部、削除して」
静かに、けれど心を込めて言った。
彼女が何も言わずに頷いたのを見て、ようやく肩の力が抜けた気がした。
やっと片付いた。次は──僕にとって、いちばん大切な人との関係を修復する番だ。
圭衣ちゃん。
待ってて。もう絶対に、離さないから。



