軽く晩酌を終えたあと、メイクを落とすためにシャワーを浴びることにした。
その前に、仕事部屋のドアの鍵を開けて中へ入る。この3LDKのマンションでいちばん広いこの部屋は、本来ならマスターベッドルームとして使うべきなのだろう。けれど、私はあえて仕事部屋にしていた。
生地を広げられる大きなシルバーテーブルに、ミシン、コンピューター。そして一面の壁は鏡張りで、マネキンに着せた服を別の角度からもすぐに確認できる。細かなシルエットや布の流れを目で捉えるために、私にとっては大事な“作業の相棒”だ。
部屋の奥にはウォークインクローゼットがあり、ダブルロックの鍵を開けて、お気に入りのパジャマを取り出した。
今夜は湯船には浸からず、さっと汗を流す程度にとどめる。脱衣所でパジャマに着替え、スキンケアを終えると、ふっと笑みがこぼれた。
──やっぱり、着心地の良い好きなものを、誰にも遠慮せず身につけられるって最高。
リラックスしたそのままの姿で、再び仕事部屋のクローゼットへと足を運ぶ。広いクローゼットの右側には、私が普段のプライベートで着る洋服たち。左側には、副業で製作したアイテムがずらりと並ぶ。
そして、正面には──
姿見と、私の大好きなピーターズファミリーのドールハウスがある。
小さなうさぎの人形たちが、レースやパステルカラーのフリルをまとって並んでいた。
彼女たちは皆、私の手で作った洋服を着ている。どれも小さな可愛らしさが詰まった、世界でひとつだけの衣装たち。
「みんな、ただいま」
思わず声をかける。まるで、本当に生きているような存在だから。
「明日は、3ヶ月ぶりのピーターズコンベンションだよ。この日のために、たくさんかわいい洋服や小物を作ったし、大人と子供のお揃いワンピースも何着か仕上げたの。
いっぱい売れるといいね」
そう語りかけるこの時間は、私にとって、かけがえのない癒しだ。
誰にも言えない私の“もうひとつの顔”。
誰にも見せたことのない、私の“本当の素顔”。
──それでも、彼女たちだけは、私のことをすべて知ってくれている気がした。
その前に、仕事部屋のドアの鍵を開けて中へ入る。この3LDKのマンションでいちばん広いこの部屋は、本来ならマスターベッドルームとして使うべきなのだろう。けれど、私はあえて仕事部屋にしていた。
生地を広げられる大きなシルバーテーブルに、ミシン、コンピューター。そして一面の壁は鏡張りで、マネキンに着せた服を別の角度からもすぐに確認できる。細かなシルエットや布の流れを目で捉えるために、私にとっては大事な“作業の相棒”だ。
部屋の奥にはウォークインクローゼットがあり、ダブルロックの鍵を開けて、お気に入りのパジャマを取り出した。
今夜は湯船には浸からず、さっと汗を流す程度にとどめる。脱衣所でパジャマに着替え、スキンケアを終えると、ふっと笑みがこぼれた。
──やっぱり、着心地の良い好きなものを、誰にも遠慮せず身につけられるって最高。
リラックスしたそのままの姿で、再び仕事部屋のクローゼットへと足を運ぶ。広いクローゼットの右側には、私が普段のプライベートで着る洋服たち。左側には、副業で製作したアイテムがずらりと並ぶ。
そして、正面には──
姿見と、私の大好きなピーターズファミリーのドールハウスがある。
小さなうさぎの人形たちが、レースやパステルカラーのフリルをまとって並んでいた。
彼女たちは皆、私の手で作った洋服を着ている。どれも小さな可愛らしさが詰まった、世界でひとつだけの衣装たち。
「みんな、ただいま」
思わず声をかける。まるで、本当に生きているような存在だから。
「明日は、3ヶ月ぶりのピーターズコンベンションだよ。この日のために、たくさんかわいい洋服や小物を作ったし、大人と子供のお揃いワンピースも何着か仕上げたの。
いっぱい売れるといいね」
そう語りかけるこの時間は、私にとって、かけがえのない癒しだ。
誰にも言えない私の“もうひとつの顔”。
誰にも見せたことのない、私の“本当の素顔”。
──それでも、彼女たちだけは、私のことをすべて知ってくれている気がした。



