怒りに任せて圭衣ちゃんのマンションを出てから、彼女とは一度も会っていない。連絡も返していないまま、数日間届いていた電話やメッセージは、やがて途絶えた。
それはきっと、僕が怒りを鎮められず、黙ってしまったから。あのとき、彼女の話を何一つ聞かずに出て行った。まるで逃げるように、圭衣ちゃんのもとを離れてしまった。
今でも、耳に残っている。あの夜、僕の名前を叫ぶ彼女の泣き声が──。
そして、同時進行で問題となっていたのが、ILPのメンバー・キラリの件だった。あれから情報を集めたことで、いくつか新たに分かったことがある。
僕の住んでいるマンションはまだ特定されていない。けれど、僕の職場がサクラスクエア内にあることは、どうやら知られてしまったようだった。
サクラスクエアの商業エリアにある“おもちゃ屋”に、キラリは毎週水曜日に通っているらしい。おそらくその時、偶然僕の姿を見かけたのだろう。
僕の会社、株式会社Bon Bonは、同じサクラスクエア内でもオフィス側にある。IDカードがなければ立ち入れない場所だ。だから、オフィスの中まではバレていないはず……、だと思いたい。
でも、悠士兄ちゃんの調査によれば──
キラリは今、“彼女”の存在を執拗に追っているという。まだ、その“彼女”が圭衣ちゃんだとは特定されていない。けれど……、時間の問題かもしれない。
まさか……、圭衣ちゃんに何かされるようなことは……。
そんな不安を抱えたまま、父さんから受け取ったキラリの個人情報ファイルに目を通した。けれど、そこに書かれていた内容は、特段警戒すべきものではなかった。
⸻
工藤キラリ(30歳)
東北地方出身。地元の県立高校を卒業後、都内の大学に進学。
家族構成は父親と母親のみで、一人っ子。
大学卒業後は、都内のプチプラ系アパレル会社に就職し、販売員として働いていた。
交友関係は狭く、地元には友人と呼べる人物もいないようだ。
大学時代の友人が数人いるものの、今はあまり交流がないらしい。
ILPには、3年前に入会。
⸻
プロフィールだけ見れば、特に危険性が高いとは思えない。
けれど──人は、何かを失ったとき、簡単に“変わる”。
……、問題は、これからだ。
彼女の“執着”が、どこまで向かってくるのか。そして、僕は──圭衣ちゃんを守ることができるのか。
それはきっと、僕が怒りを鎮められず、黙ってしまったから。あのとき、彼女の話を何一つ聞かずに出て行った。まるで逃げるように、圭衣ちゃんのもとを離れてしまった。
今でも、耳に残っている。あの夜、僕の名前を叫ぶ彼女の泣き声が──。
そして、同時進行で問題となっていたのが、ILPのメンバー・キラリの件だった。あれから情報を集めたことで、いくつか新たに分かったことがある。
僕の住んでいるマンションはまだ特定されていない。けれど、僕の職場がサクラスクエア内にあることは、どうやら知られてしまったようだった。
サクラスクエアの商業エリアにある“おもちゃ屋”に、キラリは毎週水曜日に通っているらしい。おそらくその時、偶然僕の姿を見かけたのだろう。
僕の会社、株式会社Bon Bonは、同じサクラスクエア内でもオフィス側にある。IDカードがなければ立ち入れない場所だ。だから、オフィスの中まではバレていないはず……、だと思いたい。
でも、悠士兄ちゃんの調査によれば──
キラリは今、“彼女”の存在を執拗に追っているという。まだ、その“彼女”が圭衣ちゃんだとは特定されていない。けれど……、時間の問題かもしれない。
まさか……、圭衣ちゃんに何かされるようなことは……。
そんな不安を抱えたまま、父さんから受け取ったキラリの個人情報ファイルに目を通した。けれど、そこに書かれていた内容は、特段警戒すべきものではなかった。
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工藤キラリ(30歳)
東北地方出身。地元の県立高校を卒業後、都内の大学に進学。
家族構成は父親と母親のみで、一人っ子。
大学卒業後は、都内のプチプラ系アパレル会社に就職し、販売員として働いていた。
交友関係は狭く、地元には友人と呼べる人物もいないようだ。
大学時代の友人が数人いるものの、今はあまり交流がないらしい。
ILPには、3年前に入会。
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プロフィールだけ見れば、特に危険性が高いとは思えない。
けれど──人は、何かを失ったとき、簡単に“変わる”。
……、問題は、これからだ。
彼女の“執着”が、どこまで向かってくるのか。そして、僕は──圭衣ちゃんを守ることができるのか。



