自分の素直な気持ちに気づいた瞬間、堪えていた涙がぽろぽろと溢れ出した。
「……、あんた、まだ好きなんでしょう?」
葉子の問いに、私は何も言えずに頷いた。すると美愛がそっと寄ってきて、私の肩をやさしく抱きしめてくれた。
「あのね、圭衣ちゃん……、私、盗み聞きしちゃったの。雅さんと大和副社長の話。詳しくはよくわからなかったんだけど……、今、副社長が“けりをつける”ために、誰かと動いてるって。それがもうすぐ終わるらしいの。だから、忙しくて連絡できなかったのかも……?」
美愛の声はどこか不安げで、でも希望を信じたい気持ちが滲んでいた。
「それは違うと思うよ、美愛ちゃん。だって、メッセージすら既読になっていないんだから……」
そう返す私に、葉子が淡々とした口調で言った。
「
まあ、大和さんが今どう思ってるかなんて、あたしたちにはわからないよね。憶測でしか話せないことだし。──それよりさ、仕事のことだけど、ちょっと提案があるんだ」
「仕事?」
急な話題転換に戸惑う私に、葉子は真っ直ぐな目で続けた。
「圭衣、ピーターズファミリーとのコラボを考えたこと、ある?」
「……、コラボ?」
「そう。あんたの好きなロリータファッションだけじゃなくて、たとえばピーターズの世界観に合うデザインを、Cool Beautyで展開してみるの。ガーリーロリータ以外のラインも考えてみたら?」
「圭衣ちゃんのお洋服、すごく素敵だもん。あのね、私、見てみたい。Cool Beautyのピーターズ版、きっと可愛いと思うの!」
美愛の無邪気な笑顔に、思わず口元がほころぶ。
「……、やってみたいけど……、そんな大きな話、私にできるのかな……」
「交渉は私がやるよ」
葉子は即答した。そして、続けて別の案も口にした。
「それと、他の仕事のことだけど──。ウェディングドレスとユニフォームを再構成しよう。ドレスはホテル9での貸衣装限定にして、ユニフォームは既製品をいくつか用意して、その中から選んでもらう方式にするの。そうすれば、負担もだいぶ減るはずだよ」
葉子も美愛も、口を揃えて言った。
「会社を畳むなんてもったいない」と。
──本当は、私だってやめたくなんかない。
自分の手で立ち上げた、大好きなこの会社を。
その想いが、胸の奥で静かに熱を帯びはじめていた。
「……、あんた、まだ好きなんでしょう?」
葉子の問いに、私は何も言えずに頷いた。すると美愛がそっと寄ってきて、私の肩をやさしく抱きしめてくれた。
「あのね、圭衣ちゃん……、私、盗み聞きしちゃったの。雅さんと大和副社長の話。詳しくはよくわからなかったんだけど……、今、副社長が“けりをつける”ために、誰かと動いてるって。それがもうすぐ終わるらしいの。だから、忙しくて連絡できなかったのかも……?」
美愛の声はどこか不安げで、でも希望を信じたい気持ちが滲んでいた。
「それは違うと思うよ、美愛ちゃん。だって、メッセージすら既読になっていないんだから……」
そう返す私に、葉子が淡々とした口調で言った。
「
まあ、大和さんが今どう思ってるかなんて、あたしたちにはわからないよね。憶測でしか話せないことだし。──それよりさ、仕事のことだけど、ちょっと提案があるんだ」
「仕事?」
急な話題転換に戸惑う私に、葉子は真っ直ぐな目で続けた。
「圭衣、ピーターズファミリーとのコラボを考えたこと、ある?」
「……、コラボ?」
「そう。あんたの好きなロリータファッションだけじゃなくて、たとえばピーターズの世界観に合うデザインを、Cool Beautyで展開してみるの。ガーリーロリータ以外のラインも考えてみたら?」
「圭衣ちゃんのお洋服、すごく素敵だもん。あのね、私、見てみたい。Cool Beautyのピーターズ版、きっと可愛いと思うの!」
美愛の無邪気な笑顔に、思わず口元がほころぶ。
「……、やってみたいけど……、そんな大きな話、私にできるのかな……」
「交渉は私がやるよ」
葉子は即答した。そして、続けて別の案も口にした。
「それと、他の仕事のことだけど──。ウェディングドレスとユニフォームを再構成しよう。ドレスはホテル9での貸衣装限定にして、ユニフォームは既製品をいくつか用意して、その中から選んでもらう方式にするの。そうすれば、負担もだいぶ減るはずだよ」
葉子も美愛も、口を揃えて言った。
「会社を畳むなんてもったいない」と。
──本当は、私だってやめたくなんかない。
自分の手で立ち上げた、大好きなこの会社を。
その想いが、胸の奥で静かに熱を帯びはじめていた。



