料理上手な美愛が、クーラーバッグいっぱいに手料理を詰めて持ってきてくれた。そのおかげで、思い詰めた話の前に──久しぶりに、三人で楽しい夕飯を囲むことができた。
「美愛ちゃんのご飯、やっぱり最高に美味しい……」
私はそうつぶやきながら、温かい味噌汁を口に運ぶ。最近、食欲なんてまるでなかったのに。今日はちゃんと食べられている。それだけで、少し救われた気がした。
三人で同じ食卓を囲む時間──
やっぱり、私はこういう時間が大好きだ。
……、でも、これを手放す覚悟、私にあるんだろうか。日本に戻った理由のひとつは、三姉妹としてまた一緒に過ごすためだったのに。
デザートには、葉子が買ってきてくれたモンブラン。仁さんのホテル、ホテル9(クー)内のパティスリーで作られた逸品だ。
美愛が淹れてくれたあたたかい紅茶と一緒に、リビングで味わいながら──
私は、ようやく本題を切り出すことにした。
「もう……、わかってると思うけど」
カップをそっとテーブルに置き、少しだけ視線を外す。
「私と大和……、ダメになっちゃった。最後にここで怒らせて出て行ってから、もう三週間くらい……。メッセージも既読にならないし、声も聞いてないの」
その瞬間、葉子と美愛がそっと目を合わせる。まるで、何かを知っているような表情だった。
……、でも、私はまだ話し足りないことがある。
「……、あ、あとね。ずっと秘密にしてたことがあるの。一緒に来てくれる?」
私はふたりを仕事部屋の前へと案内した。
鍵を開け、ドアを開ける。さらに、奥のクローゼットに仕掛けたダブルロックを外す。
この中に──
私の“秘密”がある。
今日、初めて、ふたりに見せる。
すべては無理だけど……、今なら、二つだけ、見せられる気がする。
「ここに、私の秘密があるの」
そう言いながら、少し緊張気味に振り返る。
「……、見たら、きっと引くと思う」
言い終えた瞬間、自分の鼓動が早くなっているのに気づいた。心のどこかで、否定されるのが怖かったのだ。
深呼吸して、ドアを開け放つ。
「わぁ〜っ、可愛い!」
真っ先に反応したのは、美愛だった。ピーターズファミリーのドールハウスに駆け寄っていき、目を輝かせながら見つめている。まるでおとぎ話の中の子どもみたいに、純粋な瞳だった。
一方の葉子は、壁にかけてあったガーリーロリータの服を、一枚一枚、丁寧に手に取って見ていた。
「圭衣、なんでこれ商品化しないの? 勿体ないじゃん」
あっさりと、だけど真剣に、葉子が言った。
……、さすが、経営者目線。
いや、そこ? 私の“秘密の部屋”を見て、真っ先に出る感想がそれ?
ふたりとも、なんでそんな普通でいられるの……?
……、でも、その“普通さ”が、今の私には何よりも救いだった。
私は呆然と立ち尽くしながら、心の中でそっと、涙をこぼしそうになるのをこらえていた。
「美愛ちゃんのご飯、やっぱり最高に美味しい……」
私はそうつぶやきながら、温かい味噌汁を口に運ぶ。最近、食欲なんてまるでなかったのに。今日はちゃんと食べられている。それだけで、少し救われた気がした。
三人で同じ食卓を囲む時間──
やっぱり、私はこういう時間が大好きだ。
……、でも、これを手放す覚悟、私にあるんだろうか。日本に戻った理由のひとつは、三姉妹としてまた一緒に過ごすためだったのに。
デザートには、葉子が買ってきてくれたモンブラン。仁さんのホテル、ホテル9(クー)内のパティスリーで作られた逸品だ。
美愛が淹れてくれたあたたかい紅茶と一緒に、リビングで味わいながら──
私は、ようやく本題を切り出すことにした。
「もう……、わかってると思うけど」
カップをそっとテーブルに置き、少しだけ視線を外す。
「私と大和……、ダメになっちゃった。最後にここで怒らせて出て行ってから、もう三週間くらい……。メッセージも既読にならないし、声も聞いてないの」
その瞬間、葉子と美愛がそっと目を合わせる。まるで、何かを知っているような表情だった。
……、でも、私はまだ話し足りないことがある。
「……、あ、あとね。ずっと秘密にしてたことがあるの。一緒に来てくれる?」
私はふたりを仕事部屋の前へと案内した。
鍵を開け、ドアを開ける。さらに、奥のクローゼットに仕掛けたダブルロックを外す。
この中に──
私の“秘密”がある。
今日、初めて、ふたりに見せる。
すべては無理だけど……、今なら、二つだけ、見せられる気がする。
「ここに、私の秘密があるの」
そう言いながら、少し緊張気味に振り返る。
「……、見たら、きっと引くと思う」
言い終えた瞬間、自分の鼓動が早くなっているのに気づいた。心のどこかで、否定されるのが怖かったのだ。
深呼吸して、ドアを開け放つ。
「わぁ〜っ、可愛い!」
真っ先に反応したのは、美愛だった。ピーターズファミリーのドールハウスに駆け寄っていき、目を輝かせながら見つめている。まるでおとぎ話の中の子どもみたいに、純粋な瞳だった。
一方の葉子は、壁にかけてあったガーリーロリータの服を、一枚一枚、丁寧に手に取って見ていた。
「圭衣、なんでこれ商品化しないの? 勿体ないじゃん」
あっさりと、だけど真剣に、葉子が言った。
……、さすが、経営者目線。
いや、そこ? 私の“秘密の部屋”を見て、真っ先に出る感想がそれ?
ふたりとも、なんでそんな普通でいられるの……?
……、でも、その“普通さ”が、今の私には何よりも救いだった。
私は呆然と立ち尽くしながら、心の中でそっと、涙をこぼしそうになるのをこらえていた。



