大和のことは、いったん横に置いておこう──。
今は、まず会社の話をしなきゃ。
「葉子、ちょっと仕事の話があるの。……、実は、辞めようと思ってるの」
そう切り出すと、葉子はきょとんとした顔で聞き返した。
「えっ……、何を?」
私は、少しだけうつむいてから答える。
「仕事も、会社も……、全部。もう辞めたいの。なんだか、疲れちゃって……、ごめんね」
しばらくの沈黙のあと、葉子は静かに立ち上がると、そっと私を抱きしめてくれた。
「ごめんね、圭衣。私のせいだよ。全部、圭衣に丸投げしちゃったから……」
その言葉に、私はすぐ首を横に振った。
「違うよ、葉子のせいなんかじゃない。
ただ……、心も体も、ちょっと疲れちゃっただけ」
実際のところ、仕事のストレスも重なってはいたけれど──
本当の原因は、たぶん大和とのことだ。
それが自分の中でいちばん大きくて、苦しくて、正直、心が限界に近かった。
このまま隠し通しても、きっと何も変わらない。いずれ話さなきゃいけないのなら、今がその時なんだと思った。
「葉子……、美愛にも、話さなきゃいけないことがあるの。できるだけ早く、時間をつくれないかな?」
葉子は少し驚いたような顔をしていたが、やがて静かにうなずいた。
「わかった。あたしから連絡するよ。
──でも、会社のことはちょっとだけ時間ちょうだい。たたむにしても、譲るにしても、それなりの準備が必要だから。従業員や取引先への対応もあるし……。まずは、圭衣の話をちゃんと聞いてから、一緒に考えよう?」
その言葉に、少しだけ気持ちが軽くなった。
葉子がいてくれる、それだけで心強い。
──そして迎えた金曜日の夜。
夕飯どきに、葉子と美愛が私のマンションに来てくれた。
2人とも、お泊まりセットを持って。久しぶりの“姉妹3人の夜”だ。
美愛にはまだ子供がいないけれど、葉子は小さな双子を育てる毎日で忙しい。なのに、こんな夜をつくってくれるなんて……、本当に、ありがたい。
「大丈夫だよ。咲子母さまと仁が、『双子の心配せずに行ってこい』って言ってくれたの」
そう言って笑う葉子は、どこか嬉しそうだった。久しぶりの“子供なし”のお泊まりに、ちょっと弾んでいるようにも見える。
でも──
私のことで、またみんなに迷惑をかけてしまっている。
本当に、ごめんね。
……、でも、今夜は、ちゃんと伝えるつもりだ。
すべてを。
今は、まず会社の話をしなきゃ。
「葉子、ちょっと仕事の話があるの。……、実は、辞めようと思ってるの」
そう切り出すと、葉子はきょとんとした顔で聞き返した。
「えっ……、何を?」
私は、少しだけうつむいてから答える。
「仕事も、会社も……、全部。もう辞めたいの。なんだか、疲れちゃって……、ごめんね」
しばらくの沈黙のあと、葉子は静かに立ち上がると、そっと私を抱きしめてくれた。
「ごめんね、圭衣。私のせいだよ。全部、圭衣に丸投げしちゃったから……」
その言葉に、私はすぐ首を横に振った。
「違うよ、葉子のせいなんかじゃない。
ただ……、心も体も、ちょっと疲れちゃっただけ」
実際のところ、仕事のストレスも重なってはいたけれど──
本当の原因は、たぶん大和とのことだ。
それが自分の中でいちばん大きくて、苦しくて、正直、心が限界に近かった。
このまま隠し通しても、きっと何も変わらない。いずれ話さなきゃいけないのなら、今がその時なんだと思った。
「葉子……、美愛にも、話さなきゃいけないことがあるの。できるだけ早く、時間をつくれないかな?」
葉子は少し驚いたような顔をしていたが、やがて静かにうなずいた。
「わかった。あたしから連絡するよ。
──でも、会社のことはちょっとだけ時間ちょうだい。たたむにしても、譲るにしても、それなりの準備が必要だから。従業員や取引先への対応もあるし……。まずは、圭衣の話をちゃんと聞いてから、一緒に考えよう?」
その言葉に、少しだけ気持ちが軽くなった。
葉子がいてくれる、それだけで心強い。
──そして迎えた金曜日の夜。
夕飯どきに、葉子と美愛が私のマンションに来てくれた。
2人とも、お泊まりセットを持って。久しぶりの“姉妹3人の夜”だ。
美愛にはまだ子供がいないけれど、葉子は小さな双子を育てる毎日で忙しい。なのに、こんな夜をつくってくれるなんて……、本当に、ありがたい。
「大丈夫だよ。咲子母さまと仁が、『双子の心配せずに行ってこい』って言ってくれたの」
そう言って笑う葉子は、どこか嬉しそうだった。久しぶりの“子供なし”のお泊まりに、ちょっと弾んでいるようにも見える。
でも──
私のことで、またみんなに迷惑をかけてしまっている。
本当に、ごめんね。
……、でも、今夜は、ちゃんと伝えるつもりだ。
すべてを。



