婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

『久しぶりに彼氏とデートでピーターズコンベンション。私がプレゼントした薄紫のカラーシャツと、紫の水玉のネクタイが、とても似合っている丸大君』


──え?


目を疑った。その投稿には、僕の“後ろ姿”の写真が添えられていた。


着ているのは、まさしく先週末のピーターズコンベンションで僕が身に着けていたシャツとネクタイ。圭衣ちゃんが僕のために、色とデザインにこだわって作ってくれた一点物だ。誰が見ても、“あれは僕”だとわかってしまう。


にもかかわらず、そこには「キラリの彼氏」として、僕が紹介されていた。


──は?


一瞬、頭が真っ白になった。
どうしてそんな投稿を……?
というか、なんで僕が彼氏になってるんだ!?


僕とキラリは、グループ以外で二人きりで会ったこともない。プライベートな会話すらしたことがないし、メッセージのやりとりだって、ILPのグループLIMEで必要最低限のものだけ。


……、にもかかわらず、この投稿。


『丸大君』というのは、ILP──アイビーリーグピーターズ──で僕が使っている愛称だ。つまり、これは間違いなく“僕”のことを指している。


もっちゃんの憶測では、キラリの様子が変わり始めた時期と、僕が圭衣ちゃんとの交際をスタートさせた時期が重なっているらしい。
おそらく、僕たち4人が会話の中でその話題を出していたのを、どこかで盗み聞きされたのではないか──というのが彼の見立てだった。


それに加えて、キラリが「丸大」をSNSで彼氏として投稿し始めたのも、その頃と一致する。


まさか……、キラリが僕に気があった?
……、冗談じゃない。


僕と圭衣ちゃんの関係は、クラブの外の人間には知られていない。それでも、もし圭衣ちゃんがこの投稿を見てしまったら……?


──完全に、誤解される。


「なんで、こんなことに……」


思わず口から漏れた。

……、やっぱり、ここで止まっている場合じゃない。


キラリの退会を目前に控えたこの時期に、こんな騒動を起こされては困る。彼女を排除するための証拠集めを、急がなければ。


僕はすぐに、グループの仲間3人に連絡を入れた。キラリの投稿内容と、自分が“彼氏”とされている状況を共有し、今後の行動について協力を促す。


さらに、万が一の備えとして──
実家にも、そして悠士兄ちゃんにも一言だけ報告を入れておこう。もちろん、慶智の王子たちにも。


このままじゃ済まされない。


圭衣ちゃんを守るためにも、絶対に誤解なんてさせないためにも──
僕は、動く。