婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

月曜日──久しぶりに会った圭衣ちゃんは、どこか様子が違っていた。
最初は「仕事が立て込んでるのかな」と思ったけれど、胸に引っかかるあの違和感だけは、どうしても拭えなかった。

──僕に対する態度が、ほんの少し、でも確かに変わっている気がする。

金曜日までは確かに感じなかった距離。
それが週明けには、はっきりと“線”のようなものになっていた。
まるで、僕との間に目に見えない境界を引かれたみたいで、よそよそしい。

「……僕、何かしたっけ？」

気がつけば、自分に問いかけていた。
週末に会えなかったことで、機嫌を損ねたのか。
もっと頼ってほしいのに──僕はやっぱり、圭衣ちゃんにとって“頼りない”存在なのかもしれない。

その不安を払拭したくて、週末のドライブ旅行を提案してみた。
ゆっくり話せる時間が、どうしてもほしかった。

でも、返ってきたのは、ただ一言──「行けない」。

……その瞬間、何かがぷつんと切れた。
自分でも驚くほど一方的に言いたいことだけぶつけて、僕はそのまま彼女のマンションを出ていった。

背後から呼び止める声が聞こえた。
でも、振り返ることはできなかった。
あのときの僕は、悔しさと情けなさで心がいっぱいだった。

──そして今。
圭衣ちゃんのこととは別に、もうひとつ、気がかりなことがある。

ILP（アイビーリーグピーターズ）の中で、僕たちが所属しているグループのことだ。

僕を含む男性メンバー4人は、年齢も立場も似ていて、以前から顔見知りだった。
自然と一緒に行動するようになり、暗黙のうちにグループができあがっていた。

そんな中──3年前。
キラリという女性がILPに入会した。

彼女はどのグループにも誘われず、気づけば僕たちの輪の中に“いる”ようになっていた。
理由はわからない。でも、気づけば、それが“当たり前”になっていた。

ILPにはいくつかのルールがある。
たとえば──本名は使わず、愛称で呼び合うこと。
そして、プライベートな事情をむやみに晒さないこと。

僕も、他の3人も、それを守ってきた。
学校や家柄は違っても、いずれも“御曹司”と呼ばれる立場。
幼い頃から社交の場で顔を合わせてきたからこそ、必要以上に踏み込まないのが暗黙のマナーだった。

キラリに対しても、それは同じだった。
愛称以外の情報は一切明かしていない。
──余計なトラブルに巻き込まれたくなかったから。

思い返せば、彼女が僕たちの輪に入り込んできた当初は、本当に静かだった。
会話もほとんどなく、表情も乏しい。
ただ、黙って一歩下がってついてくるだけ。

それでも、なぜか“いつもそこにいた”。

……それが、今では──