無視されたのが気に入らなかったのか、あの女はついにお客様にまで暴言を吐きはじめた。
「こんなのを好むようじゃ、あなたたちも情けないわね! やっぱりアイビールックを着ていないと、頭の悪さが目立つわ」
……、はあ? 何なの、この人。自分のその態度で、仲間まで冷たい目で見られてるって、まったく気づいてないわけ?
しかも、ILPクラブの名前にまで泥を塗ってる。止めもしない周りの男たちもどうかしてる。ロクでもない。
私はスマホを手に取り、こっそりとセキュリティーへ連絡を入れた。
再び視線をあの一団へと戻して──そして、私は、見てはいけないものを見てしまった。
いや、正確には“見てしまった”のではなく、“気づいてしまった”。
女の隣に立つ、ひとりの男性。その人が着ている薄紫のカラーシャツと、水玉模様のネクタイ。チノパンに、ネイビーブルーのブレザー。――それは、私がクリスマスにプレゼントしたコーディネートだった。
昨日、後ろ姿で見かけたピンクのカラーシャツも、間違いなく私の作品。ということは、あの時の人影も──
……、やっぱり、大和だったんだ。
なんで? どうして彼が、あんな人たちと一緒にいるの? それも、よりによってパステルピーターズを見下すような女と──。
胸の奥からじわじわと怒りがこみ上げてきた。思わず、椅子から勢いよく立ち上がる。
……、けれど、ふと我に返った。
ま、待て。私、バレるかもしれない?
いやいや、今日は完璧に変装してるし。
ピンクのウィッグにマスク、ワンピースも定番のアリススタイル。それに、私の身長は目立つけど、リリーちゃんたちも高めだから紛れて見えるはず。
──とにかく、落ち着こう。
私は裾上げを終えたワンピースを手に取って、待っているお客様を試着室へと案内する。その間も、あの女とその仲間たちの様子を横目で見守り続けた。
幸い、商品に被害は出ていないようだ。
けれど、あの女の口はまだ閉じない。
仲間に止められる様子もなく、むしろそれすら楽しんでいるようにさえ見えた。
……、ただのかまってちゃんなの?
こんな人を放置しているILPクラブも、やっぱり最低。しかも、その中に大和がいるだなんて。
もやもやした気持ちが、胸にずっしりとのしかかる。
その時──
やっとセキュリティーが到着した。
男たちに何か声をかけている。
しばらくして、あの一団はセキュリティールームへと連れていかれることになったらしい。
私は彼らの後ろ姿を目で追いながら、なんとも言えない感情に包まれていた。胸の奥がザラザラして、言葉にならない想いが喉の奥でくすぶっていた。
「こんなのを好むようじゃ、あなたたちも情けないわね! やっぱりアイビールックを着ていないと、頭の悪さが目立つわ」
……、はあ? 何なの、この人。自分のその態度で、仲間まで冷たい目で見られてるって、まったく気づいてないわけ?
しかも、ILPクラブの名前にまで泥を塗ってる。止めもしない周りの男たちもどうかしてる。ロクでもない。
私はスマホを手に取り、こっそりとセキュリティーへ連絡を入れた。
再び視線をあの一団へと戻して──そして、私は、見てはいけないものを見てしまった。
いや、正確には“見てしまった”のではなく、“気づいてしまった”。
女の隣に立つ、ひとりの男性。その人が着ている薄紫のカラーシャツと、水玉模様のネクタイ。チノパンに、ネイビーブルーのブレザー。――それは、私がクリスマスにプレゼントしたコーディネートだった。
昨日、後ろ姿で見かけたピンクのカラーシャツも、間違いなく私の作品。ということは、あの時の人影も──
……、やっぱり、大和だったんだ。
なんで? どうして彼が、あんな人たちと一緒にいるの? それも、よりによってパステルピーターズを見下すような女と──。
胸の奥からじわじわと怒りがこみ上げてきた。思わず、椅子から勢いよく立ち上がる。
……、けれど、ふと我に返った。
ま、待て。私、バレるかもしれない?
いやいや、今日は完璧に変装してるし。
ピンクのウィッグにマスク、ワンピースも定番のアリススタイル。それに、私の身長は目立つけど、リリーちゃんたちも高めだから紛れて見えるはず。
──とにかく、落ち着こう。
私は裾上げを終えたワンピースを手に取って、待っているお客様を試着室へと案内する。その間も、あの女とその仲間たちの様子を横目で見守り続けた。
幸い、商品に被害は出ていないようだ。
けれど、あの女の口はまだ閉じない。
仲間に止められる様子もなく、むしろそれすら楽しんでいるようにさえ見えた。
……、ただのかまってちゃんなの?
こんな人を放置しているILPクラブも、やっぱり最低。しかも、その中に大和がいるだなんて。
もやもやした気持ちが、胸にずっしりとのしかかる。
その時──
やっとセキュリティーが到着した。
男たちに何か声をかけている。
しばらくして、あの一団はセキュリティールームへと連れていかれることになったらしい。
私は彼らの後ろ姿を目で追いながら、なんとも言えない感情に包まれていた。胸の奥がザラザラして、言葉にならない想いが喉の奥でくすぶっていた。



