ああ、これが──
悪名高いILPの高飛車な女、か。
周囲からも何かと噂のある彼女を目にし、そう心の中でつぶやいた私は、足早にその場を離れようとした。
だが、視線の先にふと目を惹く後ろ姿があった。
ピンクのシャツにチノパン、左手にはネイビーブルーのブレザー。高身長にほどよくついた背中の筋肉。黒髪の短めの襟足には、わずかにウェットな艶が見える。
その瞬間、胸の奥がざわついた。
──あれ?
この後ろ姿……、知ってる。
いや、見覚えがある。特に、あのピンクのカラーシャツ。
まさか……、こんな場所にいるわけがない。
今週末は忙しいって言ってたし。うん、きっと他人の空似だ。似てるだけ。
そう言い聞かせるようにして、後ろ髪を引かれる思いで自分のショップへと戻った。
ありがたいことに、その日は高飛車女からの被害もなく、客足も順調。
帰宅後には、足りなくなった商品を少しだけ補充して、初日は無事に終えることができた。
そして迎えた、コンベンション最終日。
昨日と同じくらい──いや、それ以上の人出で、朝から慌ただしい。私のショップとフォトブースの前には、すでにお客様の列ができていた。
販売はリリーちゃんとジュリアちゃんに任せ、私はミニテーブルで大人用ワンピースの裾上げに集中していた。
そんな中──
聞きたくなかった、あの不快な声が背後から聞こえてきた。
「きゃ〜、今時こんなフリルがついてる物を好む人、ほんとにいるの? 信じられな〜い!」
……、ゲッ。
ついに、うちのショップに来たか。
一応、リリーちゃんたちとは事前に話し合ってあって、この女が来たときの対応は決めてある。どんな言葉を投げかけられても、絶対に反応しない。無視。徹底スルー。
それが、私たちの答えだった。
悪名高いILPの高飛車な女、か。
周囲からも何かと噂のある彼女を目にし、そう心の中でつぶやいた私は、足早にその場を離れようとした。
だが、視線の先にふと目を惹く後ろ姿があった。
ピンクのシャツにチノパン、左手にはネイビーブルーのブレザー。高身長にほどよくついた背中の筋肉。黒髪の短めの襟足には、わずかにウェットな艶が見える。
その瞬間、胸の奥がざわついた。
──あれ?
この後ろ姿……、知ってる。
いや、見覚えがある。特に、あのピンクのカラーシャツ。
まさか……、こんな場所にいるわけがない。
今週末は忙しいって言ってたし。うん、きっと他人の空似だ。似てるだけ。
そう言い聞かせるようにして、後ろ髪を引かれる思いで自分のショップへと戻った。
ありがたいことに、その日は高飛車女からの被害もなく、客足も順調。
帰宅後には、足りなくなった商品を少しだけ補充して、初日は無事に終えることができた。
そして迎えた、コンベンション最終日。
昨日と同じくらい──いや、それ以上の人出で、朝から慌ただしい。私のショップとフォトブースの前には、すでにお客様の列ができていた。
販売はリリーちゃんとジュリアちゃんに任せ、私はミニテーブルで大人用ワンピースの裾上げに集中していた。
そんな中──
聞きたくなかった、あの不快な声が背後から聞こえてきた。
「きゃ〜、今時こんなフリルがついてる物を好む人、ほんとにいるの? 信じられな〜い!」
……、ゲッ。
ついに、うちのショップに来たか。
一応、リリーちゃんたちとは事前に話し合ってあって、この女が来たときの対応は決めてある。どんな言葉を投げかけられても、絶対に反応しない。無視。徹底スルー。
それが、私たちの答えだった。



