圭衣ちゃんは、今までの女性たちとは何かが違う。僕の趣味を否定したり、変だと笑ったりするような気がしない。なぜだか理由はうまく説明できないけれど……、ただ、そう感じた。
『結婚しちゃえば、こっちのもの』
そんな邪な考えが頭をよぎらなかったと言えば嘘になる。けれど、本当の僕を知ってもらうには、まだ心の準備ができていない。
僕の3LDKのマンションには、ピーターズファミリー専用の“仕事部屋”がある。彼女と出会った日、僕はその部屋の鍵をかけた。
──万が一、間違ってでも圭衣ちゃんが入ってしまわないように。
……、早く、この鍵が必要なくなる日が来ればいいのに。
付き合い始めてから、僕たちは順調に距離を縮めていった。何度もデートを重ね、やがて情熱的な夜を分かち合うようにもなり、半年後──僕はプロポーズを決意した。けれど、彼女は首を縦に振らなかった。
『妹たちが結婚してから、自分のことは考えるわ』
そして続けてこう言った。
『それに、婿入りしてくれる人じゃないと、私は結婚できないの』
……、婿入り。それが圭衣ちゃんの条件だった。
でも、妹の葉子ちゃんも美愛ちゃんも、すでに結婚している。九条仁も西園寺雅も、婿入りなんてしていない。
つまり、あの条件は──圭衣ちゃん自身にとっての、絶対のラインなのだ。
僕は次男坊だし、両親も彼女をとても気に入ってくれている。婿入りだって、問題なくできるのに。
──それでも、なぜ、彼女はプロポーズを受けてくれないのだろう?
もしかして……、彼女にとって僕は、男として見られていないのだろうか?だとしたら、このまま自分の趣味のことを伝えたら──嫌われてしまうかもしれない。
どんどん不安が募って、自信がなくなっていく。そして今日もまた、僕はあの部屋の鍵を外せずにいる。
……、このまま隠したまま結婚まで進めるべきなのか?
それとも──
『結婚しちゃえば、こっちのもの』
そんな邪な考えが頭をよぎらなかったと言えば嘘になる。けれど、本当の僕を知ってもらうには、まだ心の準備ができていない。
僕の3LDKのマンションには、ピーターズファミリー専用の“仕事部屋”がある。彼女と出会った日、僕はその部屋の鍵をかけた。
──万が一、間違ってでも圭衣ちゃんが入ってしまわないように。
……、早く、この鍵が必要なくなる日が来ればいいのに。
付き合い始めてから、僕たちは順調に距離を縮めていった。何度もデートを重ね、やがて情熱的な夜を分かち合うようにもなり、半年後──僕はプロポーズを決意した。けれど、彼女は首を縦に振らなかった。
『妹たちが結婚してから、自分のことは考えるわ』
そして続けてこう言った。
『それに、婿入りしてくれる人じゃないと、私は結婚できないの』
……、婿入り。それが圭衣ちゃんの条件だった。
でも、妹の葉子ちゃんも美愛ちゃんも、すでに結婚している。九条仁も西園寺雅も、婿入りなんてしていない。
つまり、あの条件は──圭衣ちゃん自身にとっての、絶対のラインなのだ。
僕は次男坊だし、両親も彼女をとても気に入ってくれている。婿入りだって、問題なくできるのに。
──それでも、なぜ、彼女はプロポーズを受けてくれないのだろう?
もしかして……、彼女にとって僕は、男として見られていないのだろうか?だとしたら、このまま自分の趣味のことを伝えたら──嫌われてしまうかもしれない。
どんどん不安が募って、自信がなくなっていく。そして今日もまた、僕はあの部屋の鍵を外せずにいる。
……、このまま隠したまま結婚まで進めるべきなのか?
それとも──



