婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

圭衣ちゃんには、まだ話していないけれど、
僕には、一つだけ“秘密”がある。


正確に言えば、家族や仲間たちは知っている。けれど、ほとんどの女性には受け入れてもらえなかった。だから僕は、これまで特定の恋人を作らずにきた。バカにされるのが怖かったから。


『男のくせに、女々しい』
『ちょっと、気持ち悪い』


そんな言葉や視線を、小学生の頃からずっと浴びてきた。僕は、ほかの男の子たちのように活発じゃなかった。大人しくて、どこか頼りない子どもだったと思う。


服の好みも少し違っていて、淡い紫やピンクのポロシャツを好んで着ていた。


それに、夢中になっていたのは“ピーターズファミリー”──ふわふわのウサギたちが暮らす、小さなドールハウスの世界。その繊細で可愛らしい世界観に、僕は心底癒されていた。


でも、そんな僕を笑う声は、いつもどこかにあった。


それでも──
僕を守ってくれた人たちがいた。雅、涼介、仁、彰人。学年は違ったけど、悠士兄ちゃんと京兄ちゃんも。彼らがいなかったら、僕はとっくに壊れていたかもしれない。


もちろん、僕は男として女性が好きだし、
女の子になりたいと思ったことは一度もない。


高校生になる頃には体つきもしっかりして、身長も180センチを超えていた。けれど、社会人になった今でも──僕の“好き”は変わらない。


ピーターズファミリーへの愛情も。可愛いものが好きな気持ちも。僕にとっては、大切なアイデンティティの一部なんだ。


……、この趣味のせいで、何度か恋愛がうまくいかなかったこともある。けれど、それでも構わない。僕は僕を、裏切りたくないから。