そして戸籍と住民票の閲覧制限申請が、なぜかすんなりと通った。おそらく、慶智の王子のひとりでもある弁護士・涼介先生のコネのおかげ……、かもしれない。
ようやく、あの人たちから離れられた。
仕事柄、葉子には新しい住所を“極秘”として伝えてあるが、美愛ちゃんにはまだ伝えられていない。
引っ越しが終わったという簡単なメッセージだけは送った。けれど、前回の話し合いで確信したのだ。どれだけ私の状況を説明しても、美愛ちゃんには受け入れがたいのだろう、と。
あの子の中で、“花村家は仲良し家族でいなきゃいけない”という思いが強すぎるのだ。
きっと現実に目を向けることが、あの子にとっては耐え難い。私の決断は、彼女にとって相当ショックだったのだと思う。
でも美愛ちゃん自身も、きっとどこかで気づいているはずだ。あの人たち……、特にあの策士のような母が、彼女に『圭衣の居場所を知らない?』と聞いたら、美愛ちゃんは悪気がなくても、つい教えてしまうだろうということを。
美愛ちゃんは、あの人の“誘導”に弱い。
やりたくないことでも、気づけばその言葉に流されてしまうことがある。
誤解されたくないけれど、私は美愛ちゃんが嫌いでこうしているわけではない。
むしろ、その逆。大好きで、大切だからこそ、彼女にこの件で苦しんでほしくないのだ。そんな思いを込めてメッセージを送り……、そして彼女も、理解してくれた。
今でも、葉子や美愛の家に遊びに行ったり、三人で出かけたりすることもある。いつかは美愛ちゃんにも、この家へ来てもらいたい。そう思っている。
引っ越しの荷物整理もようやく終わり、部屋の中もすっきりした。段ボールがあちらこちらに積まれていた頃は、気持ちも落ち着かず、どこかそわそわしていた。
縁側にビーズ入りのボディピローを置き、ゴロンと寝転がる。目の前に広がる秋の空が、こんなにも穏やかだなんて、今まで気づかなかった。少しだけ……、心にも余裕ができたのかもしれない。
ようやく、前に進めた。自分でいるために、その一歩を踏み出せた。
そのために、妹たちを巻き込み、傷つけ、そして家族、あの人たちからも距離を置いた。
戸籍と住民票の閲覧制限が正式に決まったあと、伊集院総合法律事務所に呼ばれた両親と、葉子、美愛は、涼介先生からその決定を伝えられたという。
涼介先生によれば母は突然泣き出し、父は手で目を覆い、ただうつむいていたらしい。
事前に私の意志を知らされていた妹たちは、その姿をどこか冷静に、静かに見ていたという。
私は、家族をバラバラにしたかったわけじゃない。もし妹たちが、あの人たちとの関係をこれからも続けたいなら、それでいい。それは、私自身にも言えること。
もし、これをきっかけに彼女たちが私と疎遠になってしまうのだとしても。それは、致し方のないことなのだと思っている。
ようやく、あの人たちから離れられた。
仕事柄、葉子には新しい住所を“極秘”として伝えてあるが、美愛ちゃんにはまだ伝えられていない。
引っ越しが終わったという簡単なメッセージだけは送った。けれど、前回の話し合いで確信したのだ。どれだけ私の状況を説明しても、美愛ちゃんには受け入れがたいのだろう、と。
あの子の中で、“花村家は仲良し家族でいなきゃいけない”という思いが強すぎるのだ。
きっと現実に目を向けることが、あの子にとっては耐え難い。私の決断は、彼女にとって相当ショックだったのだと思う。
でも美愛ちゃん自身も、きっとどこかで気づいているはずだ。あの人たち……、特にあの策士のような母が、彼女に『圭衣の居場所を知らない?』と聞いたら、美愛ちゃんは悪気がなくても、つい教えてしまうだろうということを。
美愛ちゃんは、あの人の“誘導”に弱い。
やりたくないことでも、気づけばその言葉に流されてしまうことがある。
誤解されたくないけれど、私は美愛ちゃんが嫌いでこうしているわけではない。
むしろ、その逆。大好きで、大切だからこそ、彼女にこの件で苦しんでほしくないのだ。そんな思いを込めてメッセージを送り……、そして彼女も、理解してくれた。
今でも、葉子や美愛の家に遊びに行ったり、三人で出かけたりすることもある。いつかは美愛ちゃんにも、この家へ来てもらいたい。そう思っている。
引っ越しの荷物整理もようやく終わり、部屋の中もすっきりした。段ボールがあちらこちらに積まれていた頃は、気持ちも落ち着かず、どこかそわそわしていた。
縁側にビーズ入りのボディピローを置き、ゴロンと寝転がる。目の前に広がる秋の空が、こんなにも穏やかだなんて、今まで気づかなかった。少しだけ……、心にも余裕ができたのかもしれない。
ようやく、前に進めた。自分でいるために、その一歩を踏み出せた。
そのために、妹たちを巻き込み、傷つけ、そして家族、あの人たちからも距離を置いた。
戸籍と住民票の閲覧制限が正式に決まったあと、伊集院総合法律事務所に呼ばれた両親と、葉子、美愛は、涼介先生からその決定を伝えられたという。
涼介先生によれば母は突然泣き出し、父は手で目を覆い、ただうつむいていたらしい。
事前に私の意志を知らされていた妹たちは、その姿をどこか冷静に、静かに見ていたという。
私は、家族をバラバラにしたかったわけじゃない。もし妹たちが、あの人たちとの関係をこれからも続けたいなら、それでいい。それは、私自身にも言えること。
もし、これをきっかけに彼女たちが私と疎遠になってしまうのだとしても。それは、致し方のないことなのだと思っている。



