婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

そんなわけで今、僕はとあるトランクルームビルの3階、ある一室の前に立っている。プロポーズを“今は”と断った圭衣ちゃんが、僕を連れて来たかった場所。あのあと車に乗り込み、ほとんど言葉も交わさないまま、ここへと向かってきた。


けじめをつけたい。そんな気持ちが、彼女の背中から伝わってくる。

 
一体、この扉の向こうに何があるんだろう?


不安と好奇心が入り混じったまま、僕が無言でそのドアを見つめていると、ようやく圭衣ちゃんが口を開いた。

 
「私にも秘密があるの。それも──三つ」

 
その声のトーンと、俯いたままの後ろ姿から、彼女の緊張が痛いほど伝わってくる。


「この中には、そのうちの二つがあるから……」

 
ぎゅっと握っていたカードキーをリーダーにかざすと、カチッと電子音が鳴り、ロックが外れた。その瞬間、彼女がゆっくりとドアを押し開ける。


その先に広がっていたのは……、僕は言葉を失った。


そこには、フリルとレースがたっぷりあしらわれたパステルカラーのワンピースがずらりと並び、壁際には、細かく整頓されたディスプレイケースが並んでいた。
ピンク、水色、ラベンダー……、まるで夢の中のようなメルヘンの世界が広がっている。

 
「……、えっ、嘘だろ?」


思わず声が漏れ、口元が綻ぶ。


「私の、ピーターズコレクションと……、あとは──」

「……、あっ! もしかして圭衣ちゃん、パステルピーターズ⁉︎」

 
驚きと喜びが一気に押し寄せてくる。


まさか、まさか……!僕たちは、お互いに言えなかった同じ“趣味”を、密かにずっと持っていたなんて。

 
彼女のこのガーリーロリータファッションへの想い。ずっと、誰にも言えなかったんだろう。

 
わかるよ、その気持ち。僕だって、ずっと人目を気にして、陰でピーターズを愛しながらも隠し続けてきた。


『男なのに人形?』
『女々しい』
『もっと男らしくしたら?』


そんな言葉に、何度も傷ついてきたから。圭衣ちゃんも、きっと同じだった。

 
手足の長い彼女が、この部屋にあるどのワンピースを着ても間違いなく似合う。特に目を引いたのは、少しだけ丈の短いブルーのワンピースに、真っ白なエプロンが重ねられたあの一着。……、これは、僕がピーターズコンベンションで見て、心を奪われた“あの服”じゃないか?

 
「まさか……、これって、圭衣ちゃんの……?」

 
頷く彼女に、僕はまたもや驚かされる。
僕が愛してやまない『パステルピーターズ』のドレス。その制作者が、まさか圭衣ちゃん本人だったなんて!


センスも、手先の器用さも、全部……、やっぱり圭衣ちゃんはすごい。

 
気づけば、胸の奥があたたかくなっていた。


今度のコンベンションでは、ぜひ一緒に回りたい。圭衣ちゃんと手をつないで、僕の“自慢の彼女”を、ILPのみんなに紹介したい。


──って、あ。


まだプロポーズ、受けてもらってなかったんだった。

 
確か、秘密は三つあるって言ってたよね。
この部屋にあるのは、そのうちの二つ。
残る一つは……、話、か。

 
僕たちは、最後の“秘密”を聞くために、再びマンションへと向かった。