仕事部屋の隣、そこが僕の“秘密の場所”。
圭衣ちゃんを案内してドアの前に立ったものの、鍵を開けた手が止まってしまう。
……、怖かった。
扉の向こうにあるのは、大切な僕の世界。けれど、それを知られた途端に拒絶された記憶が、鮮明に蘇ってくる。
『おまえ、男なのに人形で遊んでるのか?』
『大和君、女の子みたい』
『大和は男女だ』
『あなたってもっと男らしいと思ってたのに』
胸の奥で疼く、過去の傷。あの頃の僕は、それでも大好きな世界を手放せなかった。
今、再びこの扉を開けようとしている。あの時とは違う、自分の意思で彼女にすべてを知ってほしくて。
僕はゆっくりと深呼吸をして、隣に立つ彼女の顔を見つめた。
「僕は今でも圭衣ちゃんを愛していて、結婚も君以外は考えられない。だから……、僕の“秘密”を知ってほしい。お願いだから……、僕を、嫌いにならないで」
そう告げて意を決してドアを開けた。
すると圭衣ちゃんは、ためらうことなく中へと足を踏み入れた。そのまま吸い込まれるように、早足で“ピーターズファミリールーム”へ。
その後ろ姿を見つめながら、僕の胸に不安が広がっていく。
彼女は何も言わない。
沈黙が、まるで心の距離のように感じて。
やっぱり、呆れてるのかな。
「お願いだから……、なんか言ってよ、圭衣ちゃん……」
どんな反応が返ってくるのか、怖くて仕方がなかった。けれど、ガラスケースの前で立ち止まっていた彼女が、ゆっくりと振り返る。
その表情は、思いもよらないほど明るくて、どこか興奮気味だった。
「感動してる……。整理されてて、見やすいし──特にこの洋服!ショップみたいに綺麗に陳列されてて……、すごく手間がかかったでしょ?」
思わず目を見開く。
圭衣ちゃんは、怒っても呆れてもいない。
むしろ、心から感心してくれていた。
「僕のこと、変だと思わないの? 三十半ばの男がピーターズ好きなんだよ?
女々しいって……、思わない?」
「ううん。そんなこと、一切思わないよ」
彼女の言葉が、すとんと心に染み渡る。
「それにさ、このフリルがついてるワンピース……」
彼女はそっと手を伸ばし、ケースの中のドレスに視線を向ける。
それは僕がコンベンションで偶然見つけて一目惚れした、お気に入りの一着だった。
「ああ、それね。僕もすごく気に入ってて。デザインがすごく凝ってるでしょ? 誰が作ったのかは分からないけど、ひと目見た瞬間に“これだ!”って思ったんだ」
気づけば、ついハイテンションで熱く語っていた。ディテールの可愛さ、縫製の丁寧さ、カラーリングの絶妙なバランス。誰が作ったかは分からないけれど、とにかく“好き”な気持ちが止まらなくて。
圭衣ちゃんは、そんな僕の説明を、優しい笑顔で静かに聞いてくれていた。まるで、心の深いところまで肯定されたような、そんな温かさだった。
圭衣ちゃんを案内してドアの前に立ったものの、鍵を開けた手が止まってしまう。
……、怖かった。
扉の向こうにあるのは、大切な僕の世界。けれど、それを知られた途端に拒絶された記憶が、鮮明に蘇ってくる。
『おまえ、男なのに人形で遊んでるのか?』
『大和君、女の子みたい』
『大和は男女だ』
『あなたってもっと男らしいと思ってたのに』
胸の奥で疼く、過去の傷。あの頃の僕は、それでも大好きな世界を手放せなかった。
今、再びこの扉を開けようとしている。あの時とは違う、自分の意思で彼女にすべてを知ってほしくて。
僕はゆっくりと深呼吸をして、隣に立つ彼女の顔を見つめた。
「僕は今でも圭衣ちゃんを愛していて、結婚も君以外は考えられない。だから……、僕の“秘密”を知ってほしい。お願いだから……、僕を、嫌いにならないで」
そう告げて意を決してドアを開けた。
すると圭衣ちゃんは、ためらうことなく中へと足を踏み入れた。そのまま吸い込まれるように、早足で“ピーターズファミリールーム”へ。
その後ろ姿を見つめながら、僕の胸に不安が広がっていく。
彼女は何も言わない。
沈黙が、まるで心の距離のように感じて。
やっぱり、呆れてるのかな。
「お願いだから……、なんか言ってよ、圭衣ちゃん……」
どんな反応が返ってくるのか、怖くて仕方がなかった。けれど、ガラスケースの前で立ち止まっていた彼女が、ゆっくりと振り返る。
その表情は、思いもよらないほど明るくて、どこか興奮気味だった。
「感動してる……。整理されてて、見やすいし──特にこの洋服!ショップみたいに綺麗に陳列されてて……、すごく手間がかかったでしょ?」
思わず目を見開く。
圭衣ちゃんは、怒っても呆れてもいない。
むしろ、心から感心してくれていた。
「僕のこと、変だと思わないの? 三十半ばの男がピーターズ好きなんだよ?
女々しいって……、思わない?」
「ううん。そんなこと、一切思わないよ」
彼女の言葉が、すとんと心に染み渡る。
「それにさ、このフリルがついてるワンピース……」
彼女はそっと手を伸ばし、ケースの中のドレスに視線を向ける。
それは僕がコンベンションで偶然見つけて一目惚れした、お気に入りの一着だった。
「ああ、それね。僕もすごく気に入ってて。デザインがすごく凝ってるでしょ? 誰が作ったのかは分からないけど、ひと目見た瞬間に“これだ!”って思ったんだ」
気づけば、ついハイテンションで熱く語っていた。ディテールの可愛さ、縫製の丁寧さ、カラーリングの絶妙なバランス。誰が作ったかは分からないけれど、とにかく“好き”な気持ちが止まらなくて。
圭衣ちゃんは、そんな僕の説明を、優しい笑顔で静かに聞いてくれていた。まるで、心の深いところまで肯定されたような、そんな温かさだった。



