先ほど、コンシェルジュから連絡が入った。
「来客がこちらに向かっています」と。
緊張気味な僕は、落ち着かない気持ちを持て余して玄関に続く廊下を、何度も行ったり来たりしていた。
一昨日、紫道君から指輪を受け取ったあと、涼介、仁、そして雅と共に、圭衣ちゃんの近況を聞かされた。
その内容は想像を遥かに超えるもので、圭衣ちゃんだけでなく、彼女を庇ってくれていた紫道君にまで被害が及んでいた。
そして……、その元凶が、自分の兄・烏丸悠士だったことも、この日、確信に至った。
紫道君からの提案で、圭衣ちゃんと会い、誤解を解く場を設けることにした。僕は迷わず、このマンションに来てもらうようお願いした。
なぜなら、この場所にある“秘密の部屋”を見せたい。僕のすべてを知ってもらいたかったから。
そんなことを思い返していると、かすかにヒールの足音が聞こえた気がした。けれど、しばらく待ってもインターフォンは鳴らない。
気になった僕は、そっと玄関のドアを開けてみた。
するとそこには、驚いた顔をした圭衣ちゃんが立っていた。
会いたかった彼女が、こうして目の前にいる。喜びが込み上げてくる一方で、やつれて、疲れ果てた彼女の姿に愕然とする。胸の奥が、ズキリと痛んだ。
圭衣ちゃんをここまで追い詰めた元凶は、他でもない……、僕なんだ。
「い、いらっしゃい。圭衣ちゃん……。下から連絡が来たから……、さ、さあ、上がって」
「……、お邪魔します」
どこか覇気のない、か細い声。
僕は彼女をリビングへ案内した。
少しでも安心してもらえたらと思い、圭衣ちゃんが好きなローズブレンドの紅茶と、甘酸っぱいフランボワーズのマカロンを用意していた。
けれど彼女は、家に入ってから一度も僕の顔を見てくれない。
テーブル越しに座るその姿は、まるで心の扉に鍵をかけたように、ずっと俯いたまま。
紫道君から聞いていた通り……、いや、それ以上に、彼女は痩せ細っていた。一回り、小さくなってしまったように見える。
僕は、償うことができるのだろうか?
答えのない問いが胸を過る。
それでも、今できることをやるしかない。
ひとつひとつ、誠意を込めて話すしかない。
まずは、悠士兄ちゃんのこと。
次にあの日、僕が出ていった理由。
そしてキラリの件と、“僕の秘密”の話。
すべてを包み隠さず話すと決めていた。
彼女の返事は、どれも短くて素っ気ない。
けれど、僕を無視することはなかった。
……、ちゃんと、言葉を返してくれる。
それだけで、今の僕には希望だった。
「来客がこちらに向かっています」と。
緊張気味な僕は、落ち着かない気持ちを持て余して玄関に続く廊下を、何度も行ったり来たりしていた。
一昨日、紫道君から指輪を受け取ったあと、涼介、仁、そして雅と共に、圭衣ちゃんの近況を聞かされた。
その内容は想像を遥かに超えるもので、圭衣ちゃんだけでなく、彼女を庇ってくれていた紫道君にまで被害が及んでいた。
そして……、その元凶が、自分の兄・烏丸悠士だったことも、この日、確信に至った。
紫道君からの提案で、圭衣ちゃんと会い、誤解を解く場を設けることにした。僕は迷わず、このマンションに来てもらうようお願いした。
なぜなら、この場所にある“秘密の部屋”を見せたい。僕のすべてを知ってもらいたかったから。
そんなことを思い返していると、かすかにヒールの足音が聞こえた気がした。けれど、しばらく待ってもインターフォンは鳴らない。
気になった僕は、そっと玄関のドアを開けてみた。
するとそこには、驚いた顔をした圭衣ちゃんが立っていた。
会いたかった彼女が、こうして目の前にいる。喜びが込み上げてくる一方で、やつれて、疲れ果てた彼女の姿に愕然とする。胸の奥が、ズキリと痛んだ。
圭衣ちゃんをここまで追い詰めた元凶は、他でもない……、僕なんだ。
「い、いらっしゃい。圭衣ちゃん……。下から連絡が来たから……、さ、さあ、上がって」
「……、お邪魔します」
どこか覇気のない、か細い声。
僕は彼女をリビングへ案内した。
少しでも安心してもらえたらと思い、圭衣ちゃんが好きなローズブレンドの紅茶と、甘酸っぱいフランボワーズのマカロンを用意していた。
けれど彼女は、家に入ってから一度も僕の顔を見てくれない。
テーブル越しに座るその姿は、まるで心の扉に鍵をかけたように、ずっと俯いたまま。
紫道君から聞いていた通り……、いや、それ以上に、彼女は痩せ細っていた。一回り、小さくなってしまったように見える。
僕は、償うことができるのだろうか?
答えのない問いが胸を過る。
それでも、今できることをやるしかない。
ひとつひとつ、誠意を込めて話すしかない。
まずは、悠士兄ちゃんのこと。
次にあの日、僕が出ていった理由。
そしてキラリの件と、“僕の秘密”の話。
すべてを包み隠さず話すと決めていた。
彼女の返事は、どれも短くて素っ気ない。
けれど、僕を無視することはなかった。
……、ちゃんと、言葉を返してくれる。
それだけで、今の僕には希望だった。



