「私にも秘密があるの。それも、三つも。この中には、そのうちの二つがあるから」
カラカラに乾いた口でそう伝え、私はトランクルームの扉に震える手をかける。心臓がまた一段と大きく脈打つ。
ゆっくりと、ドアを開けた。
「えっ? 本当に? 圭衣ちゃんも?」
大和の声には驚きと、少しの期待が混ざっていた。真剣だった表情が一気に柔らかくなり、やがて大きな笑みが咲く。
「私のピーターズコレクションと、あとは……」
言いかけた私の言葉を、大和がぱっと遮る。
「あっ! もしかして圭衣ちゃん、パステルピーターズ?」
──えっと?
その反応が、どういう意味なのか一瞬で判断できなかった。
嬉しいの? ガッカリした?
もしかして、ロリータファッションに否定的だった……?
怖くて急に不安が胸を締めつける。
やっぱり、似合わないんだよ。高身長の、しかもアラサー間近の私なんて、フリフリの服着てたら痛々しいって、きっと思われる。
あのときの記憶が、脳裏をよぎる。
小学生の頃。ヒラヒラのワンピースが大好きだった私に、『背が高い女には似合わない』って言い放った、クラスの男の子。泣きそうになって帰宅しても、母は私の心の変化に気づかなかった。ただ趣味が変わったんだと思い込んでいた。
誰にも言えなかった気持ちを、そっと受け止めてくれたのは、近所のおばちゃんたちと、商店街の店主さんだけだった。その記憶が、今も胸をチクチクと刺す。
また、同じ思いをするのかな?
そんな不安で言葉を失っていると、
「これ、圭衣ちゃんにすごく似合うだろうな」
ーー??
驚いて顔を上げると、大和が手に取っていたのは、私が一番大好きなアリス風ワンピース。よくコンベンションで着る、お気に入りの一着。
「これ、私が一番好きなワンピースなの」
思わずそう呟くと、大和は顔をほころばせた。
「今度、一緒にコンベンションを回ろうよ! あれ? もしかして……僕が買ったピーターズのワンピースって、圭衣ちゃんのショップだったの?」
「うん」
こくんと頷くと、大和の目がさらに輝いた。
「そうだったのか! だからあんなに作りが良かったんだ。納得だよ。それにさ、僕たち同じものが好きだったんだね!」
胸がじんわりと温かくなる。でも、どうしても聞きたかったことを、思いきって口にした。
「ねぇ、大和。なんとも思わないの? ロリータファッションのこと」
彼は、きょとんとした顔で私を見る。
「えっ、なんで? 圭衣ちゃんが好きなんでしょう? それに、どれを着ても可愛いと思うよ」
ああ、やっぱりこの人が好き。
その言葉が嬉しくて、胸が熱くなって、思わず笑ってしまった。
「あっ、ありがとう、大和。そう言ってもらえてすごく嬉しい」
不安で押しつぶされそうだった心が、ふっと軽くなった。
少しだけ、未来が見えた気がした。
私たちは並んでトランクルームを後にする。
でも、まだ終わりじゃない。最後に残された三つ目の秘密。私のルーツ、家族のこと。
この場所から近い彼のマンションに戻って、私は本当の自分を、大和に伝える覚悟を決めた。
それができて初めて、私は本当の意味で彼と向き合える気がするから。
カラカラに乾いた口でそう伝え、私はトランクルームの扉に震える手をかける。心臓がまた一段と大きく脈打つ。
ゆっくりと、ドアを開けた。
「えっ? 本当に? 圭衣ちゃんも?」
大和の声には驚きと、少しの期待が混ざっていた。真剣だった表情が一気に柔らかくなり、やがて大きな笑みが咲く。
「私のピーターズコレクションと、あとは……」
言いかけた私の言葉を、大和がぱっと遮る。
「あっ! もしかして圭衣ちゃん、パステルピーターズ?」
──えっと?
その反応が、どういう意味なのか一瞬で判断できなかった。
嬉しいの? ガッカリした?
もしかして、ロリータファッションに否定的だった……?
怖くて急に不安が胸を締めつける。
やっぱり、似合わないんだよ。高身長の、しかもアラサー間近の私なんて、フリフリの服着てたら痛々しいって、きっと思われる。
あのときの記憶が、脳裏をよぎる。
小学生の頃。ヒラヒラのワンピースが大好きだった私に、『背が高い女には似合わない』って言い放った、クラスの男の子。泣きそうになって帰宅しても、母は私の心の変化に気づかなかった。ただ趣味が変わったんだと思い込んでいた。
誰にも言えなかった気持ちを、そっと受け止めてくれたのは、近所のおばちゃんたちと、商店街の店主さんだけだった。その記憶が、今も胸をチクチクと刺す。
また、同じ思いをするのかな?
そんな不安で言葉を失っていると、
「これ、圭衣ちゃんにすごく似合うだろうな」
ーー??
驚いて顔を上げると、大和が手に取っていたのは、私が一番大好きなアリス風ワンピース。よくコンベンションで着る、お気に入りの一着。
「これ、私が一番好きなワンピースなの」
思わずそう呟くと、大和は顔をほころばせた。
「今度、一緒にコンベンションを回ろうよ! あれ? もしかして……僕が買ったピーターズのワンピースって、圭衣ちゃんのショップだったの?」
「うん」
こくんと頷くと、大和の目がさらに輝いた。
「そうだったのか! だからあんなに作りが良かったんだ。納得だよ。それにさ、僕たち同じものが好きだったんだね!」
胸がじんわりと温かくなる。でも、どうしても聞きたかったことを、思いきって口にした。
「ねぇ、大和。なんとも思わないの? ロリータファッションのこと」
彼は、きょとんとした顔で私を見る。
「えっ、なんで? 圭衣ちゃんが好きなんでしょう? それに、どれを着ても可愛いと思うよ」
ああ、やっぱりこの人が好き。
その言葉が嬉しくて、胸が熱くなって、思わず笑ってしまった。
「あっ、ありがとう、大和。そう言ってもらえてすごく嬉しい」
不安で押しつぶされそうだった心が、ふっと軽くなった。
少しだけ、未来が見えた気がした。
私たちは並んでトランクルームを後にする。
でも、まだ終わりじゃない。最後に残された三つ目の秘密。私のルーツ、家族のこと。
この場所から近い彼のマンションに戻って、私は本当の自分を、大和に伝える覚悟を決めた。
それができて初めて、私は本当の意味で彼と向き合える気がするから。



