婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

彼に促され、私は静かにそのあとをついていく。向かった先は仕事部屋の隣。見覚えのないドアの前で、大和が足を止めた。

 
そこは、私の仕事部屋兼ピーターズファミリーのコレクションルームと同じく、鍵がかかっていた。大和はポケットから鍵を取り出し、ゆっくりと鍵穴に差し込む。

 
カチャリ。

 
扉の取っ手を握るその手が、わずかに震えていた。そして、深く、長い息を吐き出すと私の方を見つめて、ぽつりと呟いた。

 
「僕は今でも、圭衣ちゃんを愛してる。結婚だって、君以外は考えられないんだ。だからこの秘密を知ってもらいたい。お願いだから僕のこと、嫌いにならないで」

 
その最後の言葉は、消えてしまいそうなほど小さくて。それでも、彼の瞳には真剣な想いが宿っていた。

 
カチャ。 

 
ドアが静かに開かれる。そして私の目に飛び込んできたのは--夢のような光景だった。

 
広い部屋いっぱいに広がる、ピーターズファミリーの世界。まさに、そのために作られた専用空間。部屋の中央には、ILP・アイビーリーグピーターズを象徴する、アメリカの名門大学を模したディスプレイ。ミニチュアの建物や芝生、学生たちをイメージしたピーターズが配置され、まるで文化祭のジオラマのよう。私のクローゼットの角にあるそれとは、比べもににならない--いや、比べること自体が失礼だ。

 
さらに壁一面にはガラスのフィギュアケースが並び、その中でもとくに私の目を引いたのは、クローゼットのような大型ケース。

 
うそ、すごい!

 
思わず小走りに近づいてしまった。ケースの中には、小さなハンガーで一着一着丁寧に吊るされた洋服たち。カラフルなラックには、まるでセレクトショップのように綺麗に並ぶ衣装。

 
その種類の多さにも驚いた。アイビーリーグ系のトラッドファッションだけでなく、着物や甚平、カジュアル系……えっ? 
ええっ!? 
ちょっと待って……
これって……!

 
息を呑み込み、目を見開く。そこにあったのは私がコンベンションで販売した、ガーリーロリータファッションのワンピースたち。

 
淡いパステルカラー。たっぷりのフリルと繊細なレース。胸元のリボンや、小花柄の刺繍。まぎれもなく、私の手でデザインし、作り上げた服だった。

 
「大切に、してくれてる……」

 
思わず小さく言葉が漏れる。

 
どの服も他の衣装と変わらず、いや、それ以上に丁寧に保管されていた。目の奥が、じんわりと熱くなる。

 
あれ? 
でも私、大和に直接これを売ったこと、あったっけ?

 
胸の奥に、疑問とともに芽生える、淡い予感。彼は、いつから私の作ったものを、知っていてくれたのだろう。