「美愛ちゃんの目には、ずっとそう映っていたの? そうなら──あなた、何も見えてなかったのよ」
冷静に言い放ったつもりだったけど、声の奥に押し殺した想いが滲んでいた。
この子には、何を言っても無駄かもしれないふと、そんな諦めがよぎる。
「よ、ようちゃんからも圭衣ちゃんに言ってよ。父さまと母さま、圭衣ちゃんのこと大事に思ってるって……!」
──ようちゃん。
美愛ちゃんにそう呼ばれた葉子は、じっと私を見つめていた。目を大きく見開いたまま、震えるような沈黙。
……、次第に、その瞳に涙が溜まっていく。
ああ、葉子は、わかってくれたんだ。その目を見て、私は確信した。
美愛ちゃんはまだ何かを言い続けている。けれど、もう耳に入ってこない。
慶智の王子たち、雅さん、仁さん、涼介先生も何か言いたそうな様子だけれど、誰ひとりとして口を開かない。私たち姉妹の間に割って入ることはしない。その距離感が、ありがたかった。
「美愛、あんたもう黙って!」
葉子の怒鳴り声が会議室に響いた。びくりと肩を震わせた美愛は、たまらず泣き出した。
雅さんがそっと彼女の肩を抱き寄せるが、それ以上の言葉はかけない。私たち姉妹だけの問題だと、察してくれているのだろう。
「圭衣、ごめんね。今まで気づいてあげられなくて……。その痛みなら、私が一番知っているのに……」
その一言で、私は救われた気がした。
やっと……、やっと家族の中で、私の痛みに触れてくれる人が現れた。
私は静かに、悲しげに微笑んで、葉子を見つめた。
養女として花村家にやってきた葉子。
彼女の“生みの親”は、葉子の存在を顧みることなく、育児のほとんどを祖母に任せていたという。
以前、彼女からぽつりと聞いたことがある。
少しでも両親に振り向いてもらおうと、お手伝いも頑張った。保育園から出されたドリルも一生懸命やった。
それでも一度も、目を向けてもらえなかったと。
だから葉子には、わかるんだ。私の気持ちが。同じように、誰かに愛されたいと願って傷ついた、私たちだから。
……、気が合うわけだよね、最初から。
すべてを話すべきか、それとも胸にしまっておくべきか一瞬迷った。
けれど、ここまで来た今、妹たちに伝えるべきだと私は思った。
ふぅっと小さく息を吐いてから、私は、あの人たち、父と母とのことを、ゆっくりと語り始めた。
冷静に言い放ったつもりだったけど、声の奥に押し殺した想いが滲んでいた。
この子には、何を言っても無駄かもしれないふと、そんな諦めがよぎる。
「よ、ようちゃんからも圭衣ちゃんに言ってよ。父さまと母さま、圭衣ちゃんのこと大事に思ってるって……!」
──ようちゃん。
美愛ちゃんにそう呼ばれた葉子は、じっと私を見つめていた。目を大きく見開いたまま、震えるような沈黙。
……、次第に、その瞳に涙が溜まっていく。
ああ、葉子は、わかってくれたんだ。その目を見て、私は確信した。
美愛ちゃんはまだ何かを言い続けている。けれど、もう耳に入ってこない。
慶智の王子たち、雅さん、仁さん、涼介先生も何か言いたそうな様子だけれど、誰ひとりとして口を開かない。私たち姉妹の間に割って入ることはしない。その距離感が、ありがたかった。
「美愛、あんたもう黙って!」
葉子の怒鳴り声が会議室に響いた。びくりと肩を震わせた美愛は、たまらず泣き出した。
雅さんがそっと彼女の肩を抱き寄せるが、それ以上の言葉はかけない。私たち姉妹だけの問題だと、察してくれているのだろう。
「圭衣、ごめんね。今まで気づいてあげられなくて……。その痛みなら、私が一番知っているのに……」
その一言で、私は救われた気がした。
やっと……、やっと家族の中で、私の痛みに触れてくれる人が現れた。
私は静かに、悲しげに微笑んで、葉子を見つめた。
養女として花村家にやってきた葉子。
彼女の“生みの親”は、葉子の存在を顧みることなく、育児のほとんどを祖母に任せていたという。
以前、彼女からぽつりと聞いたことがある。
少しでも両親に振り向いてもらおうと、お手伝いも頑張った。保育園から出されたドリルも一生懸命やった。
それでも一度も、目を向けてもらえなかったと。
だから葉子には、わかるんだ。私の気持ちが。同じように、誰かに愛されたいと願って傷ついた、私たちだから。
……、気が合うわけだよね、最初から。
すべてを話すべきか、それとも胸にしまっておくべきか一瞬迷った。
けれど、ここまで来た今、妹たちに伝えるべきだと私は思った。
ふぅっと小さく息を吐いてから、私は、あの人たち、父と母とのことを、ゆっくりと語り始めた。



