婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

「それじゃあ、今から本題に入ろう。分籍のメリットとデメリットは知っている?」

「はい、調べました」

 
私がうなずいたその時だった。突然、美愛ちゃんが勢いよく席を立ち、声を荒げた。

 
「ど、どういうこと? どうして戸籍を分けるの? なんで……、そんなの、おかしいよ! あ、あのね、私も一緒に父さまと母さまに謝るから! だから、そんなことしないで!」

 
やっぱり、妹たちは私がここに来た目的を知らされていなかったらしい。


美愛ちゃんには、きっとわからないと思う。


彼女は“あのふたり”に心から望まれて生まれてきた子。愛されて、育てられた子。


だから知らない。


私がどれほど、愛されたいと願って“いい子”でいようとしてきたかを。

 
『お姉ちゃまなんだから』

『お姉ちゃまなのに』

 
そんな言葉を何度聞いたことだろう。


きっと葉子も知らない。


彼女たちにとって、両親は“愛情深い存在”でしかないから。

 
泣くのを必死に堪えている美愛ちゃんの声が、静かな会議室に響いていた。

 
私は彼女の目をまっすぐに見つめた。そして、ゆっくりと諭すように、言葉を紡いだ。
できれば、こんなこと言いたくなかった。


けれどこれ以上、花村家をかき回したくないのも本音だった。

 
「美愛、葉子、よく聞いて。まず……、私は、あの人たちに絶対に謝らない」

 
その言葉に、葉子の目が見開かれたのがわかった。


私が『あの人たち』と呼んだことに。

 
「もうこれ以上、“いい子のお姉ちゃま”でいたくないの」

 
「家族なのに、おかしいよ……。父さまも母さまも、圭衣ちゃんのこと……、愛してるんだよ!」

 
──愛してる?


あの人たちが……?

 
思わず、ふっと笑ってしまった。