婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

「ただいま」


少し声を張って引き戸を閉める。いつも通り靴を脱ぎ、廊下を抜けて居間へ向かうと、ちょうど午後三時すぎ。両親はちゃぶ台を挟んで、お茶を飲んでいた。


「はい、どら焼きを持ってきたよ」


そう言って、母さんの前にお土産の紙袋を差し出す。母さんはにこやかに頷きながら、新しい急須を手に立ち上がった。僕はその間に父さんへどら焼きを手渡す。彼の好物であるこの和菓子に、さっそく嬉しそうな笑みが浮かんだ。


「珍しいな。平日におまえが来るなんて」

「うん。ちょっと……、緊急で話したいことがあってさ」


包みを開きかけていた父さんの手が止まり、じっと僕を見据える。その視線に、ごまかしは通用しない。


「一体何があった?」


そう問いながら、父さんは開けかけたどら焼きをそっとちゃぶ台に戻す。
ちょうどその時、母さんが湯呑みを持って戻ってきた。僕は2人が揃うのを待って、真っ直ぐに顔を上げる。


「確認したいんだ。僕たち『大家族』のモットーって、今でも“抑強扶弱(よくきょうふじゃく)”だよね?」


「ああ、そうだ」


父さんが静かにうなずく。


「近年、強い立場を悪用するような者たちが目立ってきた。いわゆる成り上がりの経営者とその家族が大半だ。おまえのところで問題を起こした三光銀行ミッドタウン支店の佐藤敏夫、あの支店長とその家族は、典型的な例だな」


なるほど。聞きたかった答えのひとつは、これで得られた。


僕は続けて尋ねる。


「じゃあ、その“モットー”を破った人間は……、どうなるの?」


すると、隣にいた母さんの顔色がさっと曇る。


「大和、あなた……、一体何をしたの?」


悲痛な声が静かな居間に響く。


「僕じゃないよ。だから安心して」


そう返してから、母さんが差し出してくれた湯呑みを手に取って一口。それでも父さんの眼差しは厳しいままだ。


「ルールを破った人間は、その行為の重さに応じて罰せられる。一概にこうとは言えないがな」

「もし──その人間が、理不尽な理由で他人を妨害したり、傷つけたりした場合は?」


僕の問いに、父さんは一瞬だけ眉をひそめた。そして、低く静かな声で答える。


「大和。最初から、私たちにわかるように話しなさい」


その一言で、場の空気が張りつめたものに変わった。僕はゴクリと唾を飲み込み、呼吸が浅くなるのを感じながら、ゆっくりと口を開く。