婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

伊乃国屋コーポレーションで長年、京兄ちゃんの父を支えてきた父さんは、表向きは副社長として辣腕を振るっていた。そして、裏の顔──情報屋としても動いていた。


この仕事は、他人の裏側、つまり“見せたくない部分”を暴くことも含まれる。対象者のあらゆる情報を、時にはえぐるように引き出さなきゃいけない。だからこそ、感情を一切挟まずに取り掛かるのが基本。でないと、こっちの精神がやられてしまうから。


だから、僕と悠士兄ちゃんが一人前になったタイミングで、父さんが突然引退を決めたときも、誰も驚かなかったし、反対もしなかった。


実際、僕も高校卒業と同時に、本格的に“裏”の仕事に関わり始めた。だけど人の闇に触れ続ける日々は、自分自身をもむしばんでいく。


『こんな生活、続けてたら……、いつか壊れる』


そう思ったとき、僕を救ってくれたのが、家業の病院を継ぐために医師を目指していた近衛彰人だった。彼は、僕にとって“カウンセラー”のような存在だった。

 




旧華族の僕らの家族には、それぞれ役割がある。


医者の近衛家は、目に見えない“心の傷”を癒す存在。


弁護士の伊集院家は、僕たちを法の正道へと導く存在。


ホテル・不動産を担う九条家は、各界との強力なパイプを使い、人材や情報を結ぶ存在。


そして一見、どこにでもあるような企業に見える伊乃国屋コーポレーションやBon Bonを率いる西園寺家は、“ブレイン”として僕たちの司令塔を担う。


そんな西園寺家に、代々“影”として尽くしてきたのが烏丸家──つまり、僕たちだ。


これが、僕ら“慶智の王子”たちの真の姿。
何代にもわたって変わらず続いてきた、血よりも濃い絆を持つ“大家族”なんだ。


そんなことをぼんやりと思い返しながら、やわらかい春の風に吹かれ、実家の引き戸をそっと開けた。