「次は近衛彰人先生、か」
その名前を口に出した瞬間、自分の中で何かがすっと通り抜けていく感覚があった。
彼とはあまり接点がないが、温厚で、どこか大和にも似た穏やかさを持つ人だった。病院勤めで忙しい彼が、わざわざこんな騒動に関わるとは考えにくい。おそらく彼も、違うだろう。
ここまで話して、ふと先ほどのメールのコピーを思い出した。あのメールには、私と紫道があたかも付き合っているように書かれている。
でも、紫道は恋愛対象が男性であり、私にとっても彼は頼れる兄のような存在だ。
……ってことは、この人は紫道が女性に興味がないことを知らない。慶智の王子たちの中で、このことを知らないのは2人だけ。西園寺京さんと、大和の兄、烏丸悠士さん。
この2人のうちで、私の引越しをダメにできるのは……?
紫道と私は顔を見合わせた。私たちの中では答えが出たから。
「圭衣、この分じゃどこの不動産屋に行っても阻止されるな。俺の工房の2階に来ないか? それなら不動産を通さなくてもいいし。今のマンションの更新もダメになっただろう?」
「ありがたいけれど、できないよ。そんなことをしたら紫道のショップがーー」
「それは気にするな、俺には考えがあるから。あと、おまえと大和さんが話せるようにセッティングもする、俺がアメリカへ行く前に。いい加減はっきりさせろ。悪いようにはしないから」
今、私を心配して一番頼りになるのは紫道だ。もう自分一人ではどうすることもできないし、家族も頼れない。ここは彼に助けてもらおう。
紫道のプランは、仁さんたちとこのメールについて話すこと。もし仁さんが何らかの形でショップを閉めるよう勧めてくるようなら、紫道はアメリカのお師匠さんのもとへ戻るつもりだ。結婚をしていないお師匠さんは、紫道を後継者にと望んでいる。どちらにしても、一度アメリカへ行って、師匠と話をしてくるという。
私は紫道の工房の二階に引っ越しをして、今受けている仕事が一段落したら、アメリカへ行こうかな?
たとえ大和と和解できたとしても、恋人同士に戻れるとは限らないのだから。
その名前を口に出した瞬間、自分の中で何かがすっと通り抜けていく感覚があった。
彼とはあまり接点がないが、温厚で、どこか大和にも似た穏やかさを持つ人だった。病院勤めで忙しい彼が、わざわざこんな騒動に関わるとは考えにくい。おそらく彼も、違うだろう。
ここまで話して、ふと先ほどのメールのコピーを思い出した。あのメールには、私と紫道があたかも付き合っているように書かれている。
でも、紫道は恋愛対象が男性であり、私にとっても彼は頼れる兄のような存在だ。
……ってことは、この人は紫道が女性に興味がないことを知らない。慶智の王子たちの中で、このことを知らないのは2人だけ。西園寺京さんと、大和の兄、烏丸悠士さん。
この2人のうちで、私の引越しをダメにできるのは……?
紫道と私は顔を見合わせた。私たちの中では答えが出たから。
「圭衣、この分じゃどこの不動産屋に行っても阻止されるな。俺の工房の2階に来ないか? それなら不動産を通さなくてもいいし。今のマンションの更新もダメになっただろう?」
「ありがたいけれど、できないよ。そんなことをしたら紫道のショップがーー」
「それは気にするな、俺には考えがあるから。あと、おまえと大和さんが話せるようにセッティングもする、俺がアメリカへ行く前に。いい加減はっきりさせろ。悪いようにはしないから」
今、私を心配して一番頼りになるのは紫道だ。もう自分一人ではどうすることもできないし、家族も頼れない。ここは彼に助けてもらおう。
紫道のプランは、仁さんたちとこのメールについて話すこと。もし仁さんが何らかの形でショップを閉めるよう勧めてくるようなら、紫道はアメリカのお師匠さんのもとへ戻るつもりだ。結婚をしていないお師匠さんは、紫道を後継者にと望んでいる。どちらにしても、一度アメリカへ行って、師匠と話をしてくるという。
私は紫道の工房の二階に引っ越しをして、今受けている仕事が一段落したら、アメリカへ行こうかな?
たとえ大和と和解できたとしても、恋人同士に戻れるとは限らないのだから。



