「……俺もこの子を知らないな」
スマホを覗き込みながら、紫道がそう呟いた。しかし、彼はそれきり黙り込み、写真をしばらく見つめ続けた。
やがて、何かを決意したような顔でそっと席を立ち、無言のまま2階へと上がっていった。
残された私は、テーブルの中華を箸でつつく。紫道と一緒なら、昔みたいに少しは食べられる。それでも、どこか味がしない。
大和と別れてからというもの、問題が次から次へと押し寄せて、食欲なんて湧くはずもない。
気づけば、服のサイズも緩くなっていた。
しばらくして、紫道が戻ってくる。手には、半分に折られた一枚の紙。
「おまえに見せるべきか迷ったんだが……、先日、知らないアドレスからこんなメールが届いた」
彼の手から紙を受け取り、そっと広げた瞬間、目に飛び込んできたのは、私と紫道がミッドタウンで会っていたときの写真だった。
それに添えられていたメッセージを目にした瞬間、息を呑む。
『他人の婚約者を奪ったおまえ、花村圭衣と付き合うな。こいつはおまえのものじゃない。さもなければ、すぐにおまえの宝石店をホテル9(クー)から撤退させる』
……、脅迫だった。
これは完全に悪意ある誰かの仕業だ。
私のせいで……、紫道まで巻き込んでしまっている。せっかく彼が努力して築き上げたジュエリーショップが、これで潰されたら。
「ご、ごめんなさい、紫道……。もう会わないし、迷惑もかけない。だからーー」
こみ上げる感情を抑えきれず、涙があふれ出した。恐怖、後悔、無力感、すべてが胸を締めつける。立ち上がりかけたそのとき、紫道が私の腕を優しく止めた。
「おい、まずは落ち着け。おまえ……、俺の話、まだ何も聞いてないだろ?」
申し訳なさと情けなさに言葉も出せず、私はそのまま座り込んだ。すると、紫道はキッチンから温かいお茶を淹れてきてくれた。ティッシュと一緒に差し出される湯呑みが、優しさでにじんで見える。
「おまえは、何も悪くない。だから俺に謝るな。……、まず、一度整理しよう。大和さんとの別れから、今日までに起こったことを、ぜんぶ話してくれないか?」
彼の声は、どこまでも静かで温かかった。
スマホを覗き込みながら、紫道がそう呟いた。しかし、彼はそれきり黙り込み、写真をしばらく見つめ続けた。
やがて、何かを決意したような顔でそっと席を立ち、無言のまま2階へと上がっていった。
残された私は、テーブルの中華を箸でつつく。紫道と一緒なら、昔みたいに少しは食べられる。それでも、どこか味がしない。
大和と別れてからというもの、問題が次から次へと押し寄せて、食欲なんて湧くはずもない。
気づけば、服のサイズも緩くなっていた。
しばらくして、紫道が戻ってくる。手には、半分に折られた一枚の紙。
「おまえに見せるべきか迷ったんだが……、先日、知らないアドレスからこんなメールが届いた」
彼の手から紙を受け取り、そっと広げた瞬間、目に飛び込んできたのは、私と紫道がミッドタウンで会っていたときの写真だった。
それに添えられていたメッセージを目にした瞬間、息を呑む。
『他人の婚約者を奪ったおまえ、花村圭衣と付き合うな。こいつはおまえのものじゃない。さもなければ、すぐにおまえの宝石店をホテル9(クー)から撤退させる』
……、脅迫だった。
これは完全に悪意ある誰かの仕業だ。
私のせいで……、紫道まで巻き込んでしまっている。せっかく彼が努力して築き上げたジュエリーショップが、これで潰されたら。
「ご、ごめんなさい、紫道……。もう会わないし、迷惑もかけない。だからーー」
こみ上げる感情を抑えきれず、涙があふれ出した。恐怖、後悔、無力感、すべてが胸を締めつける。立ち上がりかけたそのとき、紫道が私の腕を優しく止めた。
「おい、まずは落ち着け。おまえ……、俺の話、まだ何も聞いてないだろ?」
申し訳なさと情けなさに言葉も出せず、私はそのまま座り込んだ。すると、紫道はキッチンから温かいお茶を淹れてきてくれた。ティッシュと一緒に差し出される湯呑みが、優しさでにじんで見える。
「おまえは、何も悪くない。だから俺に謝るな。……、まず、一度整理しよう。大和さんとの別れから、今日までに起こったことを、ぜんぶ話してくれないか?」
彼の声は、どこまでも静かで温かかった。



