婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

マンションに戻るや否や、いつものようにバッグをコーヒーテーブルに放り出し、そのままソファへと身を投げた。


ふぅー、全身から力が抜けていく。


心地よいはずの自宅のソファなのに、今日はやけに体が重く感じる。

 



さっきスーパーで少しだけ買い物をしたけれど……、その間も、やっぱり“彼女”が少し距離を置きながら、私のあとをついてきていた。


私はケータイをビデオモードにして、さりげなく手元に持ちながら、ずっと録画していた。


彼女は、なんとセキュリティ完備のマンションの入り口近くまで、ぴたりと後を追ってきた。


──ふぅん。


さすがに中には入ってこなかったけど……。


これが本当にただの偶然だったとしても、証拠だけはしっかり残しておいた方がいい。何かあったときのために。

 



ソファに座り直して、スマートフォンを手に取る。メッセージアプリを開いて、紫道に連絡を送った。

 
『これから会えない? 話したいことがある』

 
すぐに既読がついて、ほどなく返信が来る。


『今日は自宅兼工房で作業してる。来ていいよ』

 
返信を確認しながら、立ち上がった。


手早くデニムに着替え、髪をほどいてポニーテールを解く。メッセンジャーバッグを、よりコンパクトなショルダーバッグに変え、部屋を後にした。

 
向かうのは、マンションの地下駐車場。今日あえて車で出ることにしたのは、彼女がまだ正面の入り口付近に残っているか確認したいから。

 



地下駐車場の出入口はマンションの横手にある。


正面からは死角になっているため、こちらからなら気づかれずに出入りできる。

 
私の車のリアウィンドウと後部座席の側面ガラスには、法律の範囲内で貼れるスモークスクリーンが装着されている。


外から車内を覗かれても、そう簡単には中の様子はわからない。

 
ゆっくりとエンジンをかけ、地下スロープを上がる。カーブを曲がって、マンションの正面へと差しかかると……、いた。


彼女は入り口付近の花壇に腰をかけていた。


片手でスマホを耳に当て、もう片手で軽く髪をいじっている。


会話に夢中なのか、それとも中の様子を探っているのか……、運転席の私には気づいていない。

 
やっぱり、つけられてたんだ。

 
心臓がひとつドクンと跳ねた。


けれど同時に、なんとも言えない安堵感が胸に広がっていく。

 
少なくとも、私が『勘違い』していたわけじゃなかった。その事実だけでも、今日の収穫だ。


ゆっくりとハンドルを切り、私は静かに車を東京の北へと走らせた。


目的地は──紫道の工房。


彼に話さなきゃいけないことが、山ほどある。