婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

黒のチノパンに、白のポロシャツ。

今朝、マンション近くの公園で見かけた、あの女性と同じ服装。

 

……、つけられてる?
いや、まさか偶然?
でも、もしそうだとしたら……、どうしよう?

 
デパ地下に行って撒く?
それとも、今来た道を引き返して彼女の方へ向かってみる?
様子を見る?

 
とっさに、今日の自分のコーデを頭の中で確認する。


ダークネイビーの五分袖Tシャツに、ライトオリーブのクロップドパンツ。


足元は黒のスニーカーで、メッセンジャーバッグの中には白いカーディガンも入っている。


髪はルーズポニーテール。ほどけば、ちょっとした変装にもなる。

 

……、逃げるか、向かうか。


あ、それとも両方やっちゃおうか?

 

彼女をジロジロ見ながら通り過ぎて、あっちにあるデパートに紛れ込む!


頭の中で作戦を立てながら、ふと小学生の頃に友達とやった“ドロケイ”を思い出して、思わず口元が緩んだ。

 



ショーウィンドウの角を曲がり、彼女の方へ90度方向転換。真っ直ぐ歩いていく。


もちろん、視線はロックオン。

 
……、あ、見逃さなかった。


こちらが急に向かってきたことで、彼女が少し動揺したような素振りを見せた。

 
やっぱり、偶然じゃない?

 
もしかしたら、このまま問い詰めることもできるかもしれない。そう考えて、さらに距離を詰めていく。


道沿いに並ぶ街路樹のひとつに身を隠そうとした彼女のすぐ横を、私は何事もないような顔で通り過ぎた。

 
その瞬間、少し怯えたような、その彼女の表情が、はっきりと目に焼きついた。

 
どこかで見たような、あの顔。
……、あ。


妹の美愛ちゃんと、重なってしまった。

 
背の高さも、オロオロした表情も、どこか似ている。誰かに詰め寄られて困っている時の美愛そのままの顔だった。

 
……、これじゃあ、質問なんてできない。
しばらく、様子を見よう。
本当に偶然かもしれないし。

 
ふつうなら、とっくに問い詰めていたと思う。だって、私は気が短い。でも、もしこれが“本物の尾行”だったとしたら、こっちも慎重に動かなきゃいけない。


引越しのこともあるし。

 
とにかく……、今日は一旦、帰ろう。


冷静に、頭を整理してから考えるべきだ。