婿入り希望の御曹司様とCool Beautyな彼女の結婚攻防戦〜長女圭衣の誰にも言えない3つの秘密〜花村三姉妹 圭衣と大和の物語

妹の葉子が契約した、ピーターズファミリーと3つのクラブのコラボ企画は、思った以上に楽しかった。


やっぱり好きな物に携わっているからだろう。どんなに忙しくても、不思議と苦じゃない。今さらだけど、この仕事を続けられたらなんて、一瞬でも思ってしまう自分がいた。

 
さらに、葉子から個人的にお願いされた仕事がある。それはあの、レアな30周年記念のウィルとラーラのぬいぐるみ2体に、ウェディングコスチュームのデザインと製作をしてほしいという依頼だった。

 
相手の個人情報は、本人の希望で開示されていないらしい。


加えて、コスチュームに関する要望もとくになく、すべて私に任せると。


……、はぁ。いちばん難しいパターンじゃない。


「圭衣が着たいドレスにすればいい」


そう葉子は言ってくれたけど……。


私が着たいのって、ガーリーロリータファッション系なんですけど⁉︎

本当にそれでいいの……? いや、いいって言ったよね、葉子。


まあ……、婚約もなくなった今、お人形に私の夢のドレスを着てもらって、満足するのもアリかもしれない。

 
ちょうど引っ越しのことや、仕事のことで、コンベンション出店の準備が間に合わないと判断し、今回はサマー出店を見送ることにしていた。ぬいぐるみ2体のコスチュームくらいなら、家でゆっくり作れるし、気分転換にもなる。


とはいえ新しいマンション探しは、相変わらず難航している。

 



あれから別の不動産屋で数件内見に行ったけど、結果は前回と同じ。断られる理由もはっきりせず、どこか腑に落ちない。


見かねた紫道が、彼の地元の友人が働いている小さな不動産屋を紹介してくれて、一緒に2件ほど内見に行った。そのときその不動産屋の担当者から、思いもよらない情報を聞かされた。

 
「名前は言えないけれど、どこからか圧力がかかっているんです。『花村圭衣さんと契約をするな』って」

 
まさか、そんなことって。何かの間違いじゃ……。


けれど、その時、紫道の顔が一瞬だけ強張ったのを、私は見逃さなかった。