「これ、クオリティー高くない?」
葉子ちゃんが、フィギュアケースの中の一着を手に取って、真剣な表情で見つめる。
「うん、僕もそう思う。全部手作りなんだ」
そう答えながら、あの時のことを思い出す。
「残念ながら、これを作った女の子は休憩中で会えなかったんだけどね。お手伝いの人が代わりに販売してくれて」
少し照れながら続ける。
「……、僕、その子のファンになっちゃったんだ」
それを聞いた葉子ちゃんが、ふっと小さく笑った。
それからしばらく、僕たちはピーターズファミリーの洋服について語り合った。圭衣ちゃんが昔作ってくれたドレスや、アクセサリーの話も交えながら。
彼女の手先の器用さや、独特のセンスは、もう十代の頃からずば抜けていた。
葉子ちゃんにも僕の趣味がちゃんと受け入れられている。そう思って少し安心したのも束の間、彼女の表情がすっと曇った。
「大和さん、ちょっと聞いてもいい?」
「うん、なに?」
「圭衣と別れてから……、何か変わったこと、ない?」
「大和さん自身じゃなくて、周りの人たちで」
唐突な質問に、思わず顔をしかめる。
「……、どういうこと?」
葉子ちゃんは少し考えるように眉を寄せたあと、口を開いた。
「うちの場合は両親なんだよね。圭衣の話題を避けるようになったの。前はそんなことなかったのに。それに……、この前、美愛が小耳に挟んだらしいけど、母さまと父さまが言ってたの。『圭衣があんなに礼儀知らずだとは思わなかった』って。2人とも、ちょっと怒ってたみたい」
「えっ、そうなの? 僕の方は……、あっ、悠士兄ちゃんが頻繁に連絡をくれるようになったかな。僕の状況をやたら聞いてくる」
「身内を疑うなんてしたくないけど……、少し、お互いの家族を調べた方がいいのかもって思ってる。だって、圭衣が両親と連絡を取っていないこと自体、異常だよ。しかもそれが2人が別れた直後からなの。圭衣って喧嘩っ早いところはあるけど、情が深くて面倒見もいいし、礼儀はちゃんとしてる。それなのに“礼儀知らず”って言われるなんて、絶対何かあったんだよ」
「……、そうだよね。僕も家族には内密に探ってみる。もしかしたら、うちの家族と花村家の間で何かあるのかもしれない。今は憶測だけど」
「ごめんなさい……、大和さんにご家族のこと疑わせるようなこと言っちゃって」
「いや、葉子ちゃんの言ってることも一理ある。圭衣ちゃんが、何の理由もなく無責任に会社や──君たち姉妹から距離を取ろうなんてするはずないんだ。僕に任せてくれる? 圭衣ちゃんを裏切ることは絶対にしない。ただ、事実は突き止めるよ」
「でも、それじゃ大和さんの立場が……」
「もし圭衣ちゃんが、理不尽に何かをされていたのなら、たとえそれが“家族”だったとしても、僕は許さない。そんな家族に縛られるくらいなら、僕は“烏丸”の名前なんて捨てたってかまわない。僕が守るべき一番大事な人は、圭衣ちゃんだから」
葉子ちゃんが、フィギュアケースの中の一着を手に取って、真剣な表情で見つめる。
「うん、僕もそう思う。全部手作りなんだ」
そう答えながら、あの時のことを思い出す。
「残念ながら、これを作った女の子は休憩中で会えなかったんだけどね。お手伝いの人が代わりに販売してくれて」
少し照れながら続ける。
「……、僕、その子のファンになっちゃったんだ」
それを聞いた葉子ちゃんが、ふっと小さく笑った。
それからしばらく、僕たちはピーターズファミリーの洋服について語り合った。圭衣ちゃんが昔作ってくれたドレスや、アクセサリーの話も交えながら。
彼女の手先の器用さや、独特のセンスは、もう十代の頃からずば抜けていた。
葉子ちゃんにも僕の趣味がちゃんと受け入れられている。そう思って少し安心したのも束の間、彼女の表情がすっと曇った。
「大和さん、ちょっと聞いてもいい?」
「うん、なに?」
「圭衣と別れてから……、何か変わったこと、ない?」
「大和さん自身じゃなくて、周りの人たちで」
唐突な質問に、思わず顔をしかめる。
「……、どういうこと?」
葉子ちゃんは少し考えるように眉を寄せたあと、口を開いた。
「うちの場合は両親なんだよね。圭衣の話題を避けるようになったの。前はそんなことなかったのに。それに……、この前、美愛が小耳に挟んだらしいけど、母さまと父さまが言ってたの。『圭衣があんなに礼儀知らずだとは思わなかった』って。2人とも、ちょっと怒ってたみたい」
「えっ、そうなの? 僕の方は……、あっ、悠士兄ちゃんが頻繁に連絡をくれるようになったかな。僕の状況をやたら聞いてくる」
「身内を疑うなんてしたくないけど……、少し、お互いの家族を調べた方がいいのかもって思ってる。だって、圭衣が両親と連絡を取っていないこと自体、異常だよ。しかもそれが2人が別れた直後からなの。圭衣って喧嘩っ早いところはあるけど、情が深くて面倒見もいいし、礼儀はちゃんとしてる。それなのに“礼儀知らず”って言われるなんて、絶対何かあったんだよ」
「……、そうだよね。僕も家族には内密に探ってみる。もしかしたら、うちの家族と花村家の間で何かあるのかもしれない。今は憶測だけど」
「ごめんなさい……、大和さんにご家族のこと疑わせるようなこと言っちゃって」
「いや、葉子ちゃんの言ってることも一理ある。圭衣ちゃんが、何の理由もなく無責任に会社や──君たち姉妹から距離を取ろうなんてするはずないんだ。僕に任せてくれる? 圭衣ちゃんを裏切ることは絶対にしない。ただ、事実は突き止めるよ」
「でも、それじゃ大和さんの立場が……」
「もし圭衣ちゃんが、理不尽に何かをされていたのなら、たとえそれが“家族”だったとしても、僕は許さない。そんな家族に縛られるくらいなら、僕は“烏丸”の名前なんて捨てたってかまわない。僕が守るべき一番大事な人は、圭衣ちゃんだから」



