あれは少し蒸し暑さを感じ始めた6月の半ば。

(誰かと話がしたい)
そんな気持ちを弄んでいた私は、日付が変わるまでの数時間、お決まりの掲示板の書き込みを上から下へスクロールしていた。

「彼女募集!」「今から飲みに行きませんか?」「趣味ともさん集まれ〜」

気になる通話相手を探して、何ページも何ページも遡る。

電気を消した布団の中で、スマホの光だけがぼうっとひかる。

私が見ている掲示板は、いわゆるセクシャルマイノリティーの人が利用するもので、その日限りの友達募集もあれば、生涯のパートナーを探している人がいたりと様々だ。

アプリが普及している時代に、掲示板とは古風だなと思いつつも、ここで出会った人の中には友達として長く関係が続いている人もいる。

今夜の目的は「通話相手」探しだ。

夜更かしをする土曜日の夜に、気の合う人と電話出来たらラッキーというくらいの気持ちで探していた。

数分探して、気になる書き込みが一件。
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今から通話しませんか?
こちらタチです!
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この人に連絡してみようかな。
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こんばんは!
初めまして、ネコのあきと申します。
宜しければ通話しましょー!
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1時間もしないうちに返信が来た。

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ご連絡ありがとうございます!
カカオのIDお送りいただければ、ご連絡します!
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カカオですねー!
◯◯◯◯◯
こちらでお願いします!
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連絡先交換はすんなり済んで、カカオのアプリから通話がかかってきた。

「こんばんは!」
「こんばんは。」

夜に溶け込んでいるような、落ち着いた声の人だった。

「良かったー!日本人の方ですね」
「え?」

この掲示板は危険も多い。
数ヶ月前に同じように通話募集の書き込みに連絡をして、いざ通話をしてみたら日本人ではなかった。

カタコトの日本語で、ドウシタノ?サミシカッタ?と聞かれて、変な汗をかいた。